お通じは「出ればいい」わけではなく「どんな出方で、どんな形状か」が大切なことがわかってきました。前回は、年齢とともに、「便秘になりやすい腸」へと変化が起きること、そして重要な排便時のスタイルについてお伝えしました。今回は、治療薬の選択肢も増えてきた便秘の最新データを紹介します。
・ここまでわかった「便秘」 出ればいいわけではない【1】
・便秘の人は便意を消失しやすく、便成分に特徴があった【2】←今回はココ
便秘の人は“胆汁酸”が少ないことが判明
つるんと出るバナナ状の便が理想なのはわかるが、なかなかそうならないことも。便秘の人では便の“内容成分”にも特徴があるという。その成分とは「胆汁酸」だ。海外の研究で、便秘の人では便中の胆汁酸の濃度が低く、下痢の人では濃度が高くなっていることがわかった(下グラフ)。
便秘の人は便中の胆汁酸濃度が低い

健康な参加者と機能性腸障害のある患者の糞便の胆汁酸濃度を調べたニュージーランドの研究。健常者群と比較し、便秘患者群では便中の胆汁酸濃度が低く、下痢患者群では胆汁酸濃度が高かった。(データ:Metabolites. 2021 Sep 9;11(9):612.)
「胆汁酸は食事でとった脂質の消化や吸収を助ける働きが知られているが、小腸で95%が吸収される。しかしその一方で残りの5%は大腸に到達し、大腸の動きを促したり、大腸で水分を分泌して便を軟らかくしたり、便意を感じやすくするなど“お通じホルモン”としての役割を担っている」(横浜市立大学大学院医学研究科の中島淳教授)。
この胆汁酸の働きに着目し、小腸での胆汁酸の再吸収を一部抑制して大腸に届ける薬剤「胆汁酸トランスポーター阻害剤」も、2018年に登場している。この薬は便を軟らかくする作用と大腸の動きを促進するという、便秘改善に重要な2つの作用を併せ持つのが特徴だ。