高血圧は心疾患や脳血管疾患など死亡リスクが高い病気の最大のリスク要因。該当する人はおよそ4300万人いると考えられている。2000年以降、新しい降圧薬などが次々と開発されているにもかかわらず、治療によって適切な血圧コントロールができている患者は3割未満にとどまっている。その原因の一つが、高血圧治療の基礎となる生活習慣の改善が不十分なことだ。こうした課題を解決するために登場したのが、今年9月に登場した「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」だ。一体どのようなアプリで、どんな人に向いているのか、そもそもアプリでなぜ血圧を下げることができるのかを2回に分けて詳しくレポートする。

今年9月に発売された高血圧治療用アプリの画面。患者の生活改善をサポートしてくれる。
今年9月に発売された高血圧治療用アプリの画面。患者の生活改善をサポートしてくれる。

死亡リスクを下げるため、厳しくなった血圧管理の目標

 高血圧は、日本人の死因の第2位(14.9%)である心疾患(心臓の病気全般)と第4位(7.3%)の脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など脳卒中)を合わせた「脳心血管病」の最大のリスク要因だ。血圧が高い状態が続くと動脈の壁に負担がかかって確実に動脈硬化を進行させ、脳心血管病のリスクを高める。このうち「脳血管疾患」は、介護が必要になった人の要因の1位(21.7%)であることも分かっている(*1)。特に要介護4、5については、脳血管疾患が要因のそれぞれ30.9%、34.5%を占めている。もし、あなたが「健康長寿でピンピンコロリ(死ぬ直前まで元気で生活を楽しむ)」を目指したいなら、できるだけ若いときから適切な血圧コントロールを意識することが大切だ。

「脳心血管病」で亡くなる人の最大の原因は高血圧
「脳心血管病」で亡くなる人の最大の原因は高血圧
高血圧は2007年の脳心血管病による死亡10万4000例と関連。この分析に含まれるすべての危険因子の中で脳心血管病による死亡の最大の危険因子であった。データ:Ikeda N, et al. PLoS Med. 2012;9(1):e1001160.

 そう言われても、「適切な血圧ってどのくらい?」と疑問に思ったり、「まだ、上の血圧(収縮期血圧)が130mmHg台だから高血圧じゃないよね」と油断している人も多いだろうが、それほど悠長でいられる時代は過去のものになりつつある。国立循環器病研究センター副院長で脳血管部門長の豊田一則氏は、「世界的に見ても、コントロールすべき血圧の目標値が下がってきています」と解説する。

 2000年以降、日本を含む多くの国で高血圧の診断基準を、「病院・クリニックなどで測る診察室血圧で、上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)のどちらか一方でも140/90mmHg以上の場合」としてきた。しかし、その後、各国で行われた大規模な臨床試験により、「脳心血管病で死亡するリスクを下げるためには130/80mmHg未満にすることが重要である」という科学的エビデンスが出そろった。日本高血圧学会は、高血圧の診断基準を診察時の血圧で140/90mmHg以上に据え置いているが、高血圧の人がどこまで血圧を下げるべきかを示す「降圧目標」は130/80mmHg未満と定めている。つまり、「今や高血圧と診断されたら、これまで以上にキッチリ血圧をコントロールする必要がある」ということだ。

診療室血圧が140/90mmHg以上、あるいは家庭で測定した家庭血圧が135/85mmHg以上になると「高血圧」と診断される。正常血圧と高血圧の間に正常高値血圧、高値血圧を設定することで予備群への注意を促している。(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より)
診療室血圧が140/90mmHg以上、あるいは家庭で測定した家庭血圧が135/85mmHg以上になると「高血圧」と診断される。正常血圧と高血圧の間に正常高値血圧、高値血圧を設定することで予備群への注意を促している。(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より)
*1 厚生労働省:平成25年 国民生活基礎調査の概況(介護の状況)