前回は、漢方薬が新型コロナウイルス感染症などの急性感染症に対してもなぜ効果が期待できるのかを紹介した。続く今回は実践編。「もしやコロナかも!?」という症状が出たときや自宅療養になったとき、後遺症が出たとき、感染予防をしたいときなど、状況ごとにどんな漢方薬をどのように使えばいいのか――。
 『新型コロナと速効!漢方』の著者で、新型コロナ治療にも漢方薬を積極的に取り入れている日高徳洲会病院(北海道新ひだか町)院長の井齋偉矢さんに自分でもできる具体的な活用法を教えていただいた。インフルエンザ対策にも有効なので、感染症が心配なこれからの季節、知っておくと心強い。

(写真はイメージ=PIXTA)
(写真はイメージ=PIXTA)

 日高徳洲会病院では、新型コロナの発熱外来や感染者の専用病棟を設けているが、その治療の初期段階から漢方薬を積極的に活用しているという。同院院長の井齋偉矢さんは次のように話す。

 「発熱外来に来た患者さんには症状に合った漢方薬を出して、すぐに飲んでもらっています。漢方薬は発熱してから早い段階で飲むのがより効果的です。当院での治療では、1~2服飲んだ後に熱が下がりだし、1日か2日でよくなる方が多く見られます。これはインフルエンザでも新型コロナでも同じです。新型コロナはオミクロン株になってから、インフルエンザの初期症状とあまり変わらなくなりましたから、従来のインフルエンザ対策と同じやり方で効果が期待できます」

 では、どんな漢方薬が効果的だろうか。

 「新型コロナやインフルエンザに感染した直後の激しい症状には、大青竜湯(だいせいりゅうとう)という漢方薬がよく効きます。具体的な症状としては、熱が出る、強い悪寒がする、筋肉や関節が痛む、頭痛がする、汗が出ない、イライラと落ち着かない、など。これらの症状が出ているときに素早く飲むのが、効かせるコツです。服用すると1時間ほどで汗がドッと出て体がラクになり、熱が下がり始めます。汗の出方が弱い場合は、1~1時間半くらい間を置いてから、もう1回飲むようにします」

 大青竜湯は、第1回で紹介した中国伝統医学の古典『傷寒論』にも登場する漢方薬だ。体を温め、発汗を強力に促すことで解熱へと向かわせる。第2類医薬品として市販されているが、医療機関で処方する場合は公的医療保険(健康保険)の対象になっていない。そこで同等の効果が期待できる近似処方として、麻黄湯(まおうとう)越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を組み合わせて使うという。これらは健康保険が利く。

 麻黄湯という名前は聞いたことがある人も多いだろう。ごく初期の風邪やインフルエンザによく用いられる漢方薬で、タミフルなどの抗インフルエンザ薬に匹敵する効果があると報告されている。一方、越婢加朮湯には関節や皮膚の炎症を鎮めたり、むくみを改善したりする働きがあり、関節リウマチなどに用いられることが多い。

 「これら2つの漢方薬各1回分を同時に飲むと、大青竜湯とほぼ同じ働きになります。子どもの場合は麻黄湯だけでもよくなる可能性がありますが、大人の場合は強い症状を示すことが多いですから、越婢加朮湯を組み合わせた方が確実に効果が増します」

 大青竜湯同様、飲むと1時間ほどで多量の発汗があり、熱が下がってくるという。汗があまり出ない場合は、1~1時間半後くらいにもう1回2剤を一緒に飲むといい。

 多くの場合は、これで快方へと向かうが、もし汗をかいた後にまだ病気が抜けていないように感じるなら、さらに桂枝湯(けいしとう)麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)を各1回分ずつ同時に飲むといいそうだ。

 「これも大青竜湯の近似処方で、私は“大青竜湯その2”と呼んでいます。患者さんには3回分だけ処方し、2~3時間おきに3服を飲み切るように指導しています。私が診た患者さんでは、内服後、半日か1日程度でほぼ病気が抜けていくというケースが多いですね」

 井齋さんによると、これらの漢方薬はウイルスなどの異物と戦う免疫の働きを高め、また感染によって体内で生じた炎症反応を鎮めることで症状を改善していくという。そもそも感染症にかかると発熱するのは、体内に侵入してきた病原体と戦うためだ。体温が1~2度上がると病原体の増殖が抑えられたり、免疫細胞の働きが高まったりする。