将来要介護にならないためには、筋力維持だけでなく意欲や疲労回復力の低下など「心身の衰え」を防ぐため、早い段階から対策することが大事。そのためには何を食べ、どのような生活を送るといいのかが滋賀県の調査からわかってきました。食事や運動などの生活行動と高齢者のフレイルや疾病予防との関連に詳しい滋賀県立大学の今井絵理准教授にお話を伺いました。

(写真はイメージ=PIXTA)
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 年をとって寝たきりになるのは困るが、実際には寝たきりになるずっと前からその前兆となる「フレイル」は始まっている。フレイルとは、活動量や意欲の低下を含めた「心身の衰え」のこと。身体的には筋力低下に体重減少、疲労やストレスからの回復力の低下などを指すが、外出や友人・知人との交流など「社会とのかかわり」の低下なども含む。

 心身の衰えというと「自然に任せて受け入れるしかない」「わかっていても手の施しようがない」と思っている人も少なくないかもしれないが、滋賀県立大学人間文化学部生活栄養学科の今井絵理准教授は早い段階の対策が重要だと話す。「放っておくと筋肉量が低下するサルコペニアや寝たきりの要介護状態に発展することもあります。そうなってからでは回復するのは難しい。フレイルにならないように、できるだけ早い時点でフレイルにつながる要因や予防策を見つけて手を打つことが必要です」と話す。

フレイルが要介護になるまで
フレイルが要介護になるまで
筋力の低下に伴うサルコペニアや、運動機能障害(ロコモティブシンドローム)が注目されがちだが、筋力の低下以外に、活動性や歩行速度の低下や体重減少、疲労の蓄積…といった「身体機能の衰え(フレイル)」がのちの要介護につながる。(図:J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2008 Sep;63(9):984-90.)

 ただ、今井准教授によると、現時点ではフレイル予防に有効な食生活を中心とした基準はまだ見つかっていないという。「身体活動や喫煙歴、飲酒などに関するデータは、実は死亡率や疾患との関係データを基にしたものです。というのも、まずフレイルについての世界的な基準がないこともあり、フレイル予防と生活習慣などに関する研究そのものが多くありません。また、国や地域によって食生活が大きく異なるため、DASH食(*1)や地中海食がいいというデータが出ても、それが日本人にとって本当にフレイル対策になるのか、そもそも生活に取り入れられるかという問題もあります」(今井准教授)

*1 Dietary Approaches to Stop Hypertensionの略。米国国立心肺血液研究所(NHLBI)が高血圧予防のために定めた食事。カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維を多めにとり、飽和脂肪酸とコレステロールを控えることを推奨している。