どんな食事が病気の予防になるの? また、どんな習慣がアンチエイジングにつながるの? 世界中で進む、“健康”にまつわる研究について、注目の最新結果をご紹介します。

 今回は、食事が、心や脳に影響しているとする2つの研究を紹介する。「魚の摂取が脳の病気を防ぐ」「お菓子を食べすぎると、うつのリスクが高まる可能性 」という2つの研究だ。

将来のために魚を食べよう! 魚の摂取が脳の病気を防ぐ

 魚の摂取量が多いほど、脳卒中などの脳血管疾患のリスクが低いことが、高齢者を対象としたフランスの研究で明らかになった。75歳未満でその関連性が強かったことから、脳血管疾患が現れる前こそ、魚の摂取は脳の健康に効果があることを示していると著者らは言っている。

脳の健康のためにも魚を食べるといいようだ
脳の健康のためにも魚を食べるといいようだ

 フランス中東部のディジョンに住む65歳以上で、認知症や脳卒中の既往、心血管疾患による入院歴のない1623人の男女(平均72.3歳)を対象に行われた。試験開始時に、食事調査票を使って、魚の摂取頻度を尋ね、「全く食べない、または週に1回未満(以下、週1回未満)」「週に1回」「週に2~3回」「週に4回以上」の4つに分類した。すると、魚の摂取頻度は平均で週に1.9回で、週に2~3回が最も多く、47%を占めた。

 また脳の健康状態を確認するため、80歳未満の人に、核磁気共鳴画像(MRI)検査を行った。脳卒中、認知機能低下、認知症のリスクを予測するマーカーとして、大脳白質病変、症状のない隠れ脳梗塞、脳と血管の間の隙間(血管周囲腔)の拡大の程度を調べ、これらを組み合わせて重症度を3段階に分類した。

 解析の結果、魚の摂取頻度が高いほど、脳血管疾患のリスクは低くなった。魚の摂取が「週1回未満」の群に比べて、「週に2~3回」および「週に4回以上」の群は、どちらも脳血管疾患のリスクと統計学的に有意に負の相関が認められた。

 また年齢による違いもあった。魚の摂取との関連性は65~69歳(580人)で最も強く、続いて70~74歳(569人)で見られ、75歳以上(474人)では有意な関連性はなかった。このため75歳未満では、週2回以上の魚の摂取で脳血管疾患のリスクは低くなるとしている。

 魚に多く含まれるn-3多価不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)は、動脈硬化や血圧の上昇を防ぐことが知られている。また魚に含まれるビタミンDは血管保護や血圧の調節に、セレンはLDL-コレステロールの代謝に関連し、これらは抗炎症作用もあるといわれている。

(データ:Neurology (2021) 97(22):e2213-e2222)