―― とはいえ、ここまで多様性のある人材を集めたのですね。

中林 バイデン氏は上院議員36年、副大統領8年のキャリアを通してワシントンを知る人。多くの政策専門家と働いたことがあり、直接キーパーソンを知っているため、他の大統領とは人脈の広さが桁違いです。

 ですから、今回の人事は彼の約50年の政治経験を使って選んだ本当に政策通の人材ばかり。こうした人事は他の人にはなかなかできません。オバマ氏にもできなかったし、政治の素人であるトランプ氏には到底できなかったこと。トランプ氏はテレビで見かけて気に入った人材を連れてくるようなことをしていましたから。

「ジョー・バイデン氏の約50年の政治経験による人脈の広さは桁違い。苦し紛れの人事にならず、優秀な人材を集められたのはバイデン氏だからこそ」(中林さん)(写真:AFP/アフロ)
「ジョー・バイデン氏の約50年の政治経験による人脈の広さは桁違い。苦し紛れの人事にならず、優秀な人材を集められたのはバイデン氏だからこそ」(中林さん)(写真:AFP/アフロ)

ハリス氏の当選で「ガラスの天井」が破られ

―― 女性初の米副大統領誕生というニュースに、日本も大きく沸きました。カマラ・ハリス氏にはどんなことを期待しますか。

中林 ハリス氏の当選は、米国史に必ずや刻まれる非常に大きな一歩です。勝利演説で発した「私は最初の女性副大統領かもしれないが、最後にはならないだろう」という言葉はとても重いものでした。彼女の当選自体が尊いことで、米国社会に貢献することになるでしょう。

 就任後は大統領をしっかり支えることが求められます。トランプ氏によって混乱させられた国内外の政治を修復し、さまざまな人たちが融合できるような社会を築くために、バイデン氏を補佐することが重要です。同時に外交、安全保障などの経験と知見を深めてもらいたい。ハリス氏は、政治の経験は少ないですが伸びしろはあると思います。副大統領としての権限の限界はあるかもしれませんが、彼女ならではの立場とアイデアで国をまとめてほしいですね。

米国政治に精通する早稲田大学教授の中林美恵子さん。大統領選の時期は、有識者として数多くのメディアに出演した。
米国政治に精通する早稲田大学教授の中林美恵子さん。大統領選の時期は、有識者として数多くのメディアに出演した。

―― 2016年のヒラリー・クリントン氏の大統領選敗北では、女性の進出を阻む「ガラスの天井」の存在が話題を呼びました。ハリス氏の当選でこの天井が破られ、米国での女性の政治進出がさらに進むと考えていいのでしょうか。

中林 そう期待していいと思います。既にハリス氏の当選という揺るぎない実績ができましたから。私はバイデン政権では財務長官に指名されたジャネット・イエレン氏にも注目しています。彼女は経済学者で、これまでに大統領経済諮問委員会の委員長、FRB(米連邦準備理事会)の議長を女性として初めて務めました。