2021年1月20日にジョー・バイデン氏が米国大統領に就任し、バイデン政権が発足。重要ポストに女性や黒人を置くなど、多様な人材を積極起用したことでも大きな注目を集めましたが、米国政治を専門とする早稲田大学教授の中林美恵子さんは、新政権や米国女性の政治参加、それが日本に与える影響をどのように見ているのでしょうか。【下】では、米国と日本との比較から、日本の女性活躍に必要な施策について聞きました。
※この記事は、2020年12月中旬に行ったインタビューを基に作成しました。
日経xwoman編集部(以下、――) バイデン政権の主要ポストに多くの女性が起用される一方で、日本の閣僚は女性がたった2人。日本のジェンダー・ギャップ指数も121位と、女性活躍が大きく遅れています。
中林美恵子さん(以下、中林) 米国と日本とでは閣僚の選び方や制度が大きく異なるので、閣僚に女性が多い、少ないは単純に比較できません。ですが、議員の選挙で見ると、米大統領選挙と同時に実施された2020年の米連邦議会選挙で、上院、下院ともに女性の当選者が史上最多となりました。これは2018年に行われた前回選挙を上回る最多記録です。米国では議員における女性の割合を一定数に定めるクオータ制を導入していませんが、それでも女性が増えるのは社会で活躍する女性の総数が増えているから。
日本の女性議員が少ないのは、社会全体で女性一人ひとりが能力を十分に発揮できる場が足りないことが理由でしょう。企業、非営利団体、省庁など、あらゆる場所で女性が活躍することで女性議員も増えてくるはずです。
女性活躍、まず経済界に。時差があり政界に波及
―― その点、米国では経済界で女性が多く活躍していますよね。
中林 そうですね。米国に限らず、どの国でも女性の活躍はまず経済界で目立つようになり、その後かなりの時差を持って政界に波及していきます。なぜこのような時差が生まれるのか。それは一人の女性が社会に出て差別などの問題に直面し、「これらの問題を解決するためには条例や法律を変えるしかない」と目覚めるまでのプロセスに時間がかかるからです。
社会に出ることで、女性の政治への関心が高まることは間違いありません。米国で「政治家になりたいか」というアンケートを行ったところ、弁護士や学者などプロフェッショナルとして働く女性たちの多くが、「興味がある」と回答。男女差もほぼありませんでした。でも、仕事をしていない女性や、プロフェッショナリズムを経験していない女性たちに聞くと、一転して消極的な反応が返ってきます。このように、個人の問題だと思っていたものは、実は社会的な壁かもしれない。そして女性がこの壁を乗り越えるのには時間がかかるため、欧州ではクオータ制が導入され、広がったのです。