女性と黒人が抱える問題の解決を

三浦 外交はバイデン氏が自分でやりたいでしょうし、ハリス氏が担うのは国内政策ではないかと思います。象徴性の観点から彼女に求められているのは、女性と黒人が抱える問題の解決ではないでしょうか。

 2020年は世界中にとって「コロナの年」になりました。真っ先に切り捨てられるのは立場の弱い労働者。例えば黒人の貧困層です。経済的不安定は彼らの自己実現を妨げ、さらに貧困を再生産し、子や孫の時代にまで格差が広がってしまいます。

 コロナ禍で米国の学校も休校になり、オンライン授業を実施したところもありましたが、経済的な理由などでオンライン授業を受けられない家庭や、授業についていけなくなる子どももいます。オンライン授業には教育格差を広げる側面もあるという点に注目して、リアルな授業を再開しろと言ったのがトランプ氏。強者の味方といわれる共和党のほうが格差に対して敏感に反応したのです。民主党にはこうした点を真摯に受け止めてもらいたいですね。

 トランプ氏が好んで用いた「ロー&オーダー(法と秩序)」は検事だったハリス氏が得意とするところ。Black Lives Matter運動は、その「法と秩序」が黒人に差別的に働いた結果、黒人が警官に殺されてしまうという事件から始まりました。

 ただし、黒人たちが訴えているのはそうした事件に対する抗議だけでなくて、自分たちの住む町の治安を改善して、子どもたちが命を落とさないような社会をつくってほしい、経済状況を改善してほしいという切実な願いが含まれています。彼らの経済状況を向上させること、住環境や治安を改善させることが求められています。

―― 次回は、新政権でハリス氏に期待される役割や、米国初の女性副大統領誕生が日本にもたらす影響について、より詳しく聞いていきます。

三浦瑠麗
三浦瑠麗 1980年10月生まれ。内政が外交に及ぼす影響の研究など、国際政治理論と比較政治が専門。東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了、博士(法学)。東京大学農学部卒業。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経てシンクタンク山猫総合研究所代表。近著に『21世紀の戦争と平和―徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)、『孤独の意味も、女であることの味わいも』(同)、『私の考え』(新潮新書)など。

取材/久保田智美(日経xwoman編集部) 文/樋口可奈子