三浦 米国の大学の学費は高いことで知られています。学費が下がれば学費の問題で進学を諦めていた人たちが救われますし、長い目で見ると女性の社会進出にも役立つはずです。大統領選の民主党予備選挙に立候補したバーニー・サンダース氏は若年層から強い支持を得ていますが、私が彼の支持者を取材したときに、彼らが一番関心を持っていたのは教育費に関する問題でした。

 中絶の問題も避けて通れません。米国の複数の州では人工妊娠中絶を禁止する法律が制定されており、ハリス氏は非難しています。米連邦最高裁判所では保守派の判事が数的優位を占めてしまいましたが、「中絶を禁止する州法を許してはいけない」という社会運動は後押しすべきことだと思います

 性教育を進めてアフターピルやピルを普及させることで、望まない妊娠や中絶を防ぐこともできます。これは性に関して保守的な共和党に比べて、民主党らしさが生かせる部分。女性に関する問題解決を担うためにハリス氏を任命した部分もあるでしょうから、この分野では彼女はかなり活躍できるはずです。ただし、議会との連携が容易ではないという課題もあります。

米国は能力を、日本は同質性を重視する国

―― 米国は日本より進んでいるように見えますが、世界経済フォーラムが昨年発表した「ジェンダー・ギャップ指数2020」の順位は53位と、高くはありません。

三浦 ただ、米国では国民の権利としての育休こそないものの、安価に利用できるベビーシッターが普及しています。だから、出産してもキャリアを続け、マミートラックに乗らないようにするという風潮があります。日本では育児を人に頼らずすべて自分でやろうとしてしまう傾向がありますよね。こうした理由などから、日本は米国よりも女性の社会進出が遅れています。

バイデン政権でハリス氏に期待される役割について話す三浦瑠麗さん(オンラインで取材) 
バイデン政権でハリス氏に期待される役割について話す三浦瑠麗さん(オンラインで取材) 

 一方で米国と日本は似ている部分もあります。民間企業が自分たちの論理に即して人材を採用すると、男性中心になってしまう、という点です。米国の上場企業の女性役員比率は22%(2017年、OECD調査)と、ヨーロッパ諸国に比べれば低く、それがジェンダー・ギャップ指数の足を引っ張っているのです。

 米国では経済成長とイノベーションの観点から女性幹部を増やそうという意識も芽生えています。でも、日本では多くの場合、株主からの圧力が働きにくい。既に成功した男性幹部の論理で会社を運営しようとするので、自分とよく似た中高年の男性を選んでしまうのです。また、女性幹部を育てるには長い時間がかかりますから、現段階でそのままにしていればなかなか増えない。企業にとってプラスになるという視点が浸透すれば、日本の民間企業にも女性幹部が増えるかもしれません。