日本は米国の動きに追随するか?

―― 同質性を求めるのは日本企業の課題ですよね。米国の民間企業では多様性と才能を兼ね備えた人を意思決定層に登用することが企業の発展につながる、という認識が広まってきているのでしょうか。

三浦 それは常識になりつつあると思います。経済が発展するのであれば、保守派も人材の多様化を止めません。そもそも米国は実力主義で、才能を賛美する文化です。組織の上に立つ女性は、才能があるからそのポジションに就いているのであり、能力がない人間が引き上げられることに対する反発も大きいのです。

 ただ、今までは実力社会といえども最後のところでガラスの天井を打ち破れず、偏見に基づく抵抗に負けてきた側面もありました。ハリス氏の当選が前例になることで、今後は当たり前のように女性の副大統領や大統領が生まれる可能性が出てきたと言えるでしょう。

―― ハリス氏の副大統領就任は日本にどんな影響を与えると思いますか?

三浦 残念ながら、日本がすぐに追随するとは考えにくいです。ハリス氏は、女性活躍やジェンダー・ギャップ解消の「象徴」として扱われる可能性が大きいと思います。既に世界各国には女性のリーダーがいますし、すぐそばにある台湾や、数年前までは韓国にも女性リーダーがいたのに、日本のジェンダー・ギャップ解消には影響がありませんでしたから。

 ただ、米国は日本にとって特別な存在。報道される機会も増えるでしょう。日本も「国際会議のメンバーに男性ばかりを出すのはまずい」と感じるようになるかもしれません

「白人男性は損をする」ことも、米国は受け入れる

―― バイデン政権では、広報の主要メンバーがすべて女性で固められ、財務長官にも女性が就任する、という点も注目されています。

三浦 先日、民主党系の友人と話したところ、彼は「もう自分には出世の芽がない」とまで言っていました。白人男性だからです。突き抜けた才能があれば別ですが、今の民主党内では、これまで優位に立ってきた白人男性が不利な時代にさえなりつつあるのかもしれません。急速な改革が進む米国において、白人男性の中には「自分たちの世代は損をする」と感じている人もいます。でも、それが長い目で見たときに社会のためになるのなら受け入れよう、と考えるのが米国のすごいところですね

 他方、共和党は今後、保守的で実力派のスタイリッシュな女性を副大統領候補として出してくることで、女性票を奪い返しに来るでしょう。日本ではまだまだですが、米国ではそんな革命的な変化が起きているのです。

三浦瑠麗
三浦瑠麗 1980年10月生まれ。内政が外交に及ぼす影響の研究など、国際政治理論と比較政治が専門。東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了、博士(法学)。東京大学農学部卒業。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経てシンクタンク山猫総合研究所代表。近著に『21世紀の戦争と平和―徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)、『孤独の意味も、女であることの味わいも』(同)、『私の考え』(新潮新書)など。

取材/久保田智美(日経xwoman編集部) 文/樋口可奈子