「男性の育休義務化」だけではシングル家庭は救えない

―― 今、日本政府内では、企業が男性を含む全社員に対して育休制度の周知を義務づけることが検討されています。女性の社会進出を促す一翼を担うことになるのでしょうか。

三浦 「男性の育休」を議論する際に、男性がその家庭にいることが前提で話が進んでいることが引っかかります。シングルマザーの子育ては、男性の育休を義務化しても助けられるものではないですよね。日本の子育て支援の発想は「理想の家族像」を前提にしていて、DVの夫がいる女性やシングルマザーのことは置き去りになっています。今後は多様性を前提にした仕組みを考えないといけません。

―― 3歳児神話などにとらわれて、女性が自分で社会進出を控えてしまう側面もあると思います。公的支援や育児サービスを整えて、女性が育児を抱え込まない環境をつくることで、女性側の意識も変わるでしょうか。

三浦 誰でも一人目の子育ては初心者。しかも産後のホルモンバランスの影響もあってか、「母親の自分が頑張らなければ」と自己犠牲的な行動を取りがちです。それぞれの自主性に任せると無理をしてしまうのです。ですから行政には、産後の支援メニューを、半ば「押しつけ」でもいいので全員に使わせるくらいの努力があっていいと思います。

 フランスでは産後の支援や手当が充実しています。個人的には、女性は産後1カ月の間、食事を作ってもらったり家事をしてもらったりできる「3食昼寝付き」の支援があってもいいのではないかと思いますね。そして、産後の体調が戻った後はしっかり働けるように引き続き形を変えてサポートする。女性側にとっても、全員が同じサービスを使っていれば、利用への抵抗感もなくなるのではないでしょうか。

 併せて男性の生活力を上げる教育をし、意識を変える必要があります。テレビ番組も企業広告も、お母さんだけがキッチンに立っているような映像を流してイメージを刷り込むのはやめたほうがいい。消費者も古い価値観に対しては「それはちょっと時代錯誤です」と声を上げていいと思います。また、国も官庁の女性を幹部に登用するなど、能力がある人を責任あるポジションに就けて意識改革をしてほしいです。

三浦瑠麗
三浦瑠麗 1980年10月生まれ。内政が外交に及ぼす影響の研究など、国際政治理論と比較政治が専門。東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了、博士(法学)。東京大学農学部卒業。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経てシンクタンク山猫総合研究所代表。近著に『21世紀の戦争と平和―徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)、『孤独の意味も、女であることの味わいも』(同)、『私の考え』(新潮新書)など。

取材/久保田智美(日経xwoman編集部) 文/樋口可奈子