『ずぼらヨガ』で知られるイラストレーターの崎田ミナさんが、筋肉や骨などを詳細に描く独自のタッチで「ほぐしワザ」を図解した『自分の手でときほぐす!ひとりほぐし』。肩こりを解消する深部リンパ節ほぐし、テニスボールを使った背中ほぐしに続いて、第3回は、リラックスしたいときにお薦めの「タッチほぐし」です。顔とデコルテにやさしく触れることで、メンタルケアできるほぐしワザを紹介します。

自分の手でときほぐす「ひとりほぐし」
第1回 ずぼらヨガの崎田ミナが図解 肩こりを「ひとりほぐし」
第2回 背中やお尻はテニスボールで「ひとりほぐし」
第3回 不安を消して自己肯定感を高める「タッチほぐし」←今回はココ

 体調がすぐれないときや不安なとき、誰かに背中をさすってもらって、安心したり苦しさがやわらいだりした経験はありませんか。人の温かい手で触れられることで心と体が変化することは、「気のせい」ではなく、体のメカニズムとして確かな理由があります。

 そしてその作用は、自分で触れることでも、コツを押さえれば、同様に得ることができるのだそうです。タッチケア研究の第一人者で、臨床発達心理士の山口創さん(※注)に、「ひとりほぐし」でもメンタルケアができる方法を教えてもらいました。そのカギとなるのが、「癒やしホルモン」です。

やさしいタッチで癒やしホルモンが出る!

 マッサージなどで皮膚に気持ちのよい刺激を受けると、その刺激が神経と脊髄を伝わって、脳が反応します。そうすると、脳内でこの「癒やしホルモン」が分泌されて脳内に広がり、一部は血流にのって全身へと運ばれていきます。

 やさしく触れられたときに、主に脳から分泌されて癒やしをもたらすのが、愛情ホルモンともいわれる「オキシトシン」と、幸せホルモンといわれる「セロトニン」です。オキシトシンは愛情を感じたときや感動したときなどに出ます。そしてオキシトシンには、セロトニンの作用を活発にする働きもあります。

 そもそも「オキシトシン」と「セロトニン」は、心と体へどんな働きを持つのでしょう?

 

 愛情ホルモンの「オキシトシン」は、やすらぎ感をもたらすほか、ストレスを減らしたり、血圧を低下させます。「セロトニン」は落ち着きや質のよい眠り、やる気を増したり、自律神経を調整する作用もあります。どちらも、幸福感や自己肯定感を増してくれます。

 ほぐすときのポイントは、温かい手でやさしく触れて、ゆったりとした速さで深呼吸をしながら行うこと。そうすると、皮膚の下にある感覚受容器の一つ「C触覚線維(しょっかくせんい)」が活性化して、副交感神経の働きを高めたり、ポジティブな感情を増したりする作用も期待できるのです。

 次ページで、自己肯定感を高めてくれる「胸のゆるふわ円タッチほぐし」と、気持ちを落ち着かせたいときの「顔タッチほぐし」を紹介します。

※注:「タッチほぐし」を教えてくれた桜美林大学リベラルアーツ学群教授の山口創さんは、タッチングの効果やオキシトシンについて研究している。『手の治癒力』、『人は皮膚から癒される』(以上草思社)、『皮膚感覚の不思議』(講談社ブルーバックス)、『からだの無意識の治癒力』(さくら舎)など著書も多数。