この人には、なぜ自分の言葉が通じないんだろう――。そう思ったことはありませんか? 部下が指示通りに動いてくれない、上司を説得できない、お客さんが乗り気になってくれないなど、「自分の言葉で相手を思うように動かせない」という悩みは多くの人が持っていると思います。

その悩み、「言葉の選び方を変える」ことで、解決するかもしれません。実は、Aさんに響きやすい言葉と、Bさんに響きやすい言葉はそれぞれ異なります。人によって、かける言葉を適切に選ぶことで心を動かしたり、行動を促したりしやすくなるのです。

この連載では、「LABプロファイル」というメソッドに基づき、相手に響きやすい言葉を選ぶ方法について紹介します。今回は相手の中で優位な「知覚チャンネル」を知り、相手に伝わりやすい形で説明するテクニックです。

 こんにちは、フリーアナウンサーの牛窪万里子です。本連載の過去2回(「なぜあの人には、私の言葉が響かないのか? 理由と対策」「目標重視かリスク回避か 相手のタイプに合わせた説得術」)の記事では、LABプロファイルに基づいて人の「判断基準」や「思考の方向性」を知り、その人の心に響きやすい言葉を選ぶ方法について紹介してきました。

 最終回となる今回は、相手が情報を得て納得するために主に使う「知覚チャンネル」について解説します。これを把握することで、その人に何かを説明して、納得してもらうことが非常にスムーズにできるようになるでしょう。

メリディアンプロモーション代表、フリーアナウンサーの牛窪万里子さん
メリディアンプロモーション代表、フリーアナウンサーの牛窪万里子さん

 例えばあなたが、自然豊かな公園へ散歩に出かけたとします。その公園にはさまざまな木や花があり、鳥や虫の鳴き声もしています。暑くも寒くもない季節で、その日は天気も良く、気持ちのいい風が吹いています。

 こういう場所で過ごしたあと、あなたの記憶に主に残るものは何でしょうか? きれいな花壇の景色でしょうか。響く鳥の声でしょうか。そよ風の心地良さでしょうか。実はこれが重要です。同じ体験をしても、何が記憶に残るかは人によって異なるのです。

 人には一人ひとり、優位感覚というものがあります。五感の中で視覚が優位な人は、目で見たことがよく印象に残ります。聴覚が優位な人は、見たものよりも聞いた音を記憶します。触覚が優位な人は、その場の暖かさや風に吹かれる感触などを後からよく思い出すことができます。全く同じ場所にいたとしても、自分の優位感覚から得た情報は記憶に鮮烈に残るのです。

 人によって優位感覚が違うのは、それまで暮らしてきた環境が異なるからです。音が印象的な環境で生きてきたら、自然と聴覚が優位になるでしょうし、病気がちなどの理由で自分の体感覚の変化に敏感な日々を送れば、触覚が優位になる可能性があります。今までの人生を反映して決まった、その人の優位感覚は、大人になってからはまず変わることがないとされています。

 この考え方を取り入れたのが、LABプロファイルの「知覚チャンネル」というカテゴリーです。主にどの感覚を使ってその人が情報を集め、処理しているかを、4パターンに分類しています。