「僕もね、そんなミスをしたことあるよ」

 「僕もね、そんなミスをしたことあるよ。もう20年近く前だけれどね。撮影当日に、撮影する新商品をデスクの上に置き忘れてしまったんだ。しかも運悪く、その日の撮影が大阪のスタジオでね。撮影素材がないので、撮影は延期。得意先から『出入り禁止』を宣告されたよ。それからしばらくは仕事がなかった。

 まだあるよ。化粧品会社にプレゼンするとき、パソコンのファイルを間違えて開いてしまった。『まずい!』と思ったら、別の得意先へのプレゼンの表紙が出てしまったんだ。『うちより大切な得意先があるようですね』と皮肉を言われてね。もちろん、プレゼンは失敗。今なら、機密情報があーだこーだ言われてクビになるところだ。まだ、おおらかな時代でよかった。

 今、僕が現場をやっていたら、即刻クビになりそうなミスばかりやっていたよ。でもね、山内くん。どんな有能な人でもミスはするものだよ。仕事は短距離走じゃない。マラソンみたいに長いものなんだ。仕事は、場数なんだよ。今回のミスは確かによくないけれど、これも場数のひとつだ。体に刻んでおくといいよ。失敗は、過去に負けない未来をつくる材料だよ」

 太陽上司の失敗談を聞くうちに、萎縮していた心が開いてきた。「なーに、失敗したら、背中を丸めて謝ればいい」、そう思うと強くなれる気がした。

【解説】上司の失敗談が部下に勇気を与える

 太陽上司の言葉、染みてきますね。自慢話の好きな上司はたくさんいます。しかし、残念なことにたいていは役に立ちません。事例が古いこと、さらには話が美化され過ぎていて、個人的なメルヘンになっていることが多いのです。部下にとって役に立つのは、上司の失敗談です。「こんな人でも、若い頃はそんなバカみたいなミスをやったんだ」と思わせる失敗の数々。これが部下に勇気を与え、その失敗から立ち直るきっかけを教えてくれるのです。

 太陽上司の失敗談、けっこう手痛い内容でしたね。でも、その失敗が今の太陽上司の養分になっている。人は成功からよりも失敗から学ぶことのほうが、ずっと多いんです。山内くん、このミスを力に変えてくださいね。太陽上司から学んだ「謝り方」もマスターしておくと、今後役に立つかもね。

まとめ

部下がミスして落ち込んでいるときは、
自分の失敗談を話す

言葉のプロが500人以上の声を集めて作った あなたの一言で部下が伸びる!見直すべき「声のかけ方」30のシーン
『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』
編集:日経xwoman
発行:日経BP
定価:1650円(10%税込)

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【内容】
イソップの寓話「北風と太陽」の教訓を基に、「北風上司」と「太陽上司」を主人公にした物語形式の一冊。

★相手を励まし、前向きにさせる「太陽言葉」
・プレッシャーに押し潰されそうな部下の心を軽くする言葉
・大きなミスをして落ち込んでいる部下を立ち直らせる言葉
・家庭の事情に悩む部下を勇気づける言葉 など

★相手のやる気をなくさせ、恐怖を与える「北風言葉」
・チャレンジしようとする部下の芽を潰す言葉
・部下に、「上司にはしごを外された」と感じさせる言葉
・仕事に私情を挟んで、部下を混乱させる自分勝手な言葉 など

イラスト/大西洋