部下にどんな言葉をかければいいか悩んでしまう、上司の言っていることの真意が分からない。同じ日本語を話しているはずなのに、なぜ、伝わらないのか。そんな世代間ギャップに注目し、コミュニケーションのノウハウや言葉の使い方を分かりやすく物語形式で解説したひきたよしあきさんの著書『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)は発売後約2週間で増刷が決定! 今回は同書から、「感情を抑えるのが苦手な部下に、怒りをコントロールさせる言葉」を紹介します。

登場人物
太陽上司(左)
総合イベント会社ホワイトベア制作一課課長。1977年生まれ、45歳。41歳の前厄で腎臓がんを患い、1年間休職。復帰後は、人材育成と新規事業に力を入れている。「彼と話すとなぜか仕事が楽しくなる」「やる気が湧く」と、他部署からも多くの相談が集まる。

柏木玲香(右)
入社8年目。主任になったばかり。

相手が絶対傷つく一言を言ってしまう

 怒りを抑えられない。ムカッと来ると、自分でも分かる。鼻息が荒くなる。その鼻息に乗せて、「だから、言ったでしょ!」「なんで今ごろ、そんな話するの!」と言葉が出てしまう。一度口にしたら、もう止まらない。心の中では「やめないと! やめないと!」と思っているのに、口はもう罵声のお祭り。そして、ああ、絶対相手が傷つく一言を言ってしまう。そこまで言わないと、気が済まない私がいる。

 だから、部下がよそよそしい。私が部屋に入ると、それまでの和やかな気配が消えて、重苦しくなるのが分かる。入社したときからこのスタイルだった。新人の頃は、「柏木さんは、手厳しいからなあ」と苦笑いされた。「でも、核心を突いているよね」と言う人もいて、私の意見が通ることも多かった。でも、主任になって、明らかに世代の違う後輩には、全く通用しない。

 できるだけ優しく、丁寧に説明しようと思うのだけれど、あまりに動きが鈍く、いいかげんで、覚えようとしないから、ついきつい言葉が出てしまう。