SDGsや企業ガバナンスでも求められている「ジェンダー平等」を解説した『多様性って何ですか? D&I、ジェンダー平等入門』(日経BP)。書籍で取り上げたデータをもとに、著者で日経xwoman客員研究員の羽生祥子が第一線で活躍する人と本音を隠さず語り合う特別編。日本にはびこる社会通念について議論すると、いつもタブーな話に展開してしまいますが、そこは避けては通れません。テーマは「男女の地位の平等感」。子育て支援代表の熊野英一さんと兼業主夫で放送作家の杉山錠士さんを迎えて意見交換しました。すると、男性からの意外な声が…。
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今回のショックな数字
羽生 この数字は社会全体における「男女の不平等感」についての内閣府のアンケートですが、なんと74.1%もの人が「男性が優遇されている」と答えている。しかも、女性だけでなく、男性もそう思っているんです。これって、すごくショックな数字でした。
保育園の立ち上げや子育て支援活動をしている熊野さん、家事育児を担う「主夫の友」を率いる杉山さん、お二人から見てもショックじゃないですか?
熊野英一さん(以下、熊野) 社会全体のざっくりイメージはこんなものじゃない? 第一印象では、「大体こんな感じだろうな」という納得感はあるよね。
杉山錠士さん(以下、杉山) 自分自身は優遇されているとは思わないけど、男性全体へのイメージはそうだね。兼業主夫の僕自身が優遇されているかどうかは置いておいて、「男性」という全体で捉えたら、こういうパブリックイメージがあるだろうな、と。
「不平等と感じているなら、平等にしてよ!」という怒りが…
羽生 え!? 納得しちゃうの? 私は「やっぱりな」と思う一方、男性への怒りの感情まで湧き上がるくらいですよ。
だって、「不平等だって分かっているなら平等にしてよ! なんでそのまま放置しているの?」って。男性が優遇されていると分かっていながら変えないのは、「優遇されたままのほうがラッキー」って男性たちが思っているということ?
熊野 確かに、現状が放置されていることへの落胆や残念感というのは分かる。でも、もうひとつあるのは、この状況って、男性だけじゃなくて、女性も放置しているんじゃない? ってこと。
女性も諦めだけじゃなく、もしかしたらこの状況で何らかの得をしている人がいるように思う。この“不平等な関係”を変えるのは、もう少し先でもいいんじゃないかとひそかに思っている女性もいるんじゃないのかな。
杉山 それはすごくあると思う。この質問に追加して、女性に「怒っていますか?」「状況を変えたいですか?」って聞いたらどうなるか興味がある。
夫婦の家事分担について「女性のほうが負担」と感じている人に対して、「どうやって変えていますか?」「何かしていますか?」って聞いてみると、具体的に話し合って改善していこうとしている夫婦は少ないんだよね。分かっていても、ちゃんと向き合って変えようとしていないところは、「男女の不平等感」とすごく似ている。
もうひとつは、みんな社会全体を見て回答しているわけじゃなくて、自分の置かれた視点で見ているでしょ。「男性優遇」というのも、かなり狭い視野で見ている答えのはず。
羽生 うわ、いきなり予想外の展開…。このデータに、一言申し上げたいという男性(しかも、お二人のように男性による家事育児を社会に広める立場の方)もいるんですね。つまり「男性優遇」という課題に対して、男女で全く違う風景を見ているってことなんですか?