多様性=ダイバーシティが組織に問われながらも、日本の組織でなかなか進まない理由を解説した書籍『SDGs、ESG経営に必須! 多様性って何ですか? D&I、ジェンダー平等入門』(日経BP発行、羽生祥子著)。同書から一部を抜粋して紹介した前回の記事「『D&Iをやって、経営が上向くのか?』と言われたら」に続いて、さらに別の角度から「なぜD&Iをやって、もうかるのか」という問いへの考察を深めていきましょう。

女性が運用する投資パフォーマンスは遜色なく優位結果も

 「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)をやって、もうかるのか」という率直な質問をされることもあります。それに答えるための情報は、さまざまな業界で分析されてきました。中でも「女性活躍が進んでいる企業ほど、純利益が上がる」という事実が、データ分析で明らかになったことは、前回の記事で紹介したとおりです。

 「ダイバーシティと業績との関係性」に着目する以外に、ここでもう一つ、ご紹介したいものがあります。それは、ヘッジファンドの運用結果についてです。証券会社や銀行など、グローバルな金融機関の中で最も権威ある資格の1つと見なされている「米国証券アナリスト資格(CFA)」の協会が出した分析です。

 日本CFA協会理事の黄春梅氏は、幅広い時期のデータを掲示して、ジェンダー多様性の利点を説明しています。

 「女性ファンドマネジャーの投資パフォーマンスは、男性ファンドマネジャーと比べても遜色ない、もしくは平均を上回るといった調査結果がある。まず2007年から2015年までの期間に、女性が運用するヘッジファンドのパフォーマンスを示すHFRI女性指数が59.43%を示した一方で、ヘッジファンド全体のパフォーマンスは36.69%であったと示す文献がある」(※1)

 「次にモーニングスター社は2018年、性別でパフォーマンスに違いはないと示している」(※2)

 「さらにゴールドマン・サックス社によると、2020年の年初から9月まで、女性のみの運用チームと男女混合のチームが運用する米国株ファンドは、男性のみのチームが運用するファンドを上回ったと示した」(※3)

(日本CFA協会理事・黄春梅氏)

※1 Breaking Away: The Path Forward for Women in Alternatives, KPMG, 2015
※2 Female Fund Manager Performance: What Does Gender Have to Do With It? Morningstar, 2018
※3 Female-managed US funds outperform all-male rivals, Financial Times, 6 September 2020
(出典) Rebecca Fender, THE FUTURE OF FINANCE: WOMEN IN INVESTING, 2020年12月17日開催 Japan Investment Conference 2020 講演資料より抜粋・翻訳

「ヘッジファンドは男性が得意」というステレオタイプに気付く

 ヘッジファンドと聞くと、映画や経済小説のイメージからか、無意識のうちに「男性が得意な仕事」というように思ってしまいがちです。まさに、無意識の偏見=ステレオタイプですね。しかし、大手投資会社がレポートを出しているように、女性と男性でヘッジファンドの運用成績に違いはなく、むしろ男性より優位な成績を残している時期が多く見られたということです。

 私はこの結果に少し驚きました。と同時に、自分のステレオタイプに気が付き、反省しました。その上で、黄氏に「なぜ女性のほうが、男性ファンドマネジャーより運用成績が良かったのか? その理由に心当たりはあるか?」と質問をしたところ、なるほど! と納得できるデータと説が返ってきました。

ヘッジファンドの運用成績に女性と男性で違いはなく、男性より優位な成績を残す時期も多く見られた
ヘッジファンドの運用成績に女性と男性で違いはなく、男性より優位な成績を残す時期も多く見られた