ジェンダーダイバーシティは、ガバナンスの向上でも利点

 女性取締役比率が高い企業では、不正や証券取引規制を違反する比率が低い傾向にあります。『Journal of Financial Economics』に掲載された学術研究(※1)によると、取締役の女性比率が高く、女性議長がリードする企業のほうが、不正を働いたり証券取引規制に違反する割合が低いことが分かっています。

 女性取締役が1人いるだけでも、取締役会の独立性が高まり、監督機能が発揮され、集団思考が減るということです。多様性が低い集団で起こりやすい集団心理を意味する「グループシンク(集団浅慮)」の特徴のうち、「道徳や倫理を無視する」「都合の悪い情報を遮断する」といったリスクが、ジェンダー多様性によって回避されているということです。

 具体的な事例を見てみましょう。下の図は、取締役会の女性比率と、環境情報開示スコアの関連を示したものです。(※2)

※1 Renee B. Adams and Daniel Ferreira, “Women in the Boardroom and their Impact on Governance and Performance,” Journal of Financial Economics, vol. 94(2009).
※2 (出所)Rebecca Fender, THE FUTURE OF FINANCE: WOMEN IN INVESTING, 2020年12月17日開催 Japan Investment Conference 2020 講演資料から抜粋・翻訳
※3 Bloomberg NEF and Sasakawa Peace Foundation,Gender Diversity and Climate Innovation SPF/BNEF報告書「ジェンダーダイバーシティと気候変動イノベーション」から

 ブルームバーグNEFと笹川平和財団が、102カ国、1万1700社のESGデータを分析した結果(※3)によると、「ジェンダーダイバーシティは、企業の気候変動ガバナンスおよび気候変動イノベーションと正の相関関係にある」と確認されました。グラフにあるように、取締役の女性比率が30%以上と高い企業は、環境情報開示スコアが高いのです。

 この情報は環境に関する情報開示というピンポイントの資料ですが、幅広いテーマでの監督機能という意味で、経営層における多様性確保が効いた事例です。

 男性だけで運用するファンドより、女性もいるファンドでは、集団心理の最大の弱点である「都合の悪い情報を遮断する、無視する」という側面が薄まり、その結果、強気・弱気含めたまっとうな投資判断ができたのでしょう。 女性が存在するファンドでは、ガバナンスの向上というメリットも功を奏して、浮き沈みの激しい投資の世界で成績が優位に保たれたのかもしれません。