男性が休んでも現場の混乱は「まったくない」

坂田 まったくありませんでした。

―― そうなのですか?

坂田 男性育休取得に関しては、ハードルはまったくありませんでした。なぜなら当社は既に、社員の長期休暇に耐えうる体制になっているからです。今でこそ、「働き方改革」の見本のように言われることもありますが、以前は残業が常態化していました。もしそのような状況のままだったら、男性育休取得によって現場はもっと混乱していたと思います。

―― サカタ製作所は14年に「残業ゼロ」を宣言して、今ではほぼ残業がないそうですね。残業をなくすための業務改善を進めた結果、男性が長く育休を取っても問題ない体制になったということでしょうか。

坂田 その通りです。「残業をゼロにする」といっても、トップが現場に対して細かな点まで「ああしろこうしろ」と指図はしません。方針と目標を示すだけです。あとは社員たちがそれぞれ、製造は製造で、営業は営業で、自分たちでおのおのの仕事を分析して、どうすれば残業をゼロにできるのかを考えました。

女性活躍&男性育休 ポイント3
業務の属人化解消

男性育休の前から業務の属人化を解消していた。きっかけは残業ゼロ宣言。

 一番効果があったのは「業務の属人化解消」です。これも恥ずかしい話なのですが、私は「業務の属人化」という言葉もやっぱり知らなくて、提案してくれた社員に教えてもらいました。そうして知識を得て周りを見回すと、どの部署でも属人化が進んでいて。経理や人事、営業などほとんどの部署で「この人がいないと業務が進まない」という状況でした。

男性育休の推進前から業務の脱属人化を進めていた
男性育休の推進前から業務の脱属人化を進めていた

 属人化を解消するために、業務効率化を進めたり、部署内で勉強会を行い知識を共有したりと、各部署がそれぞれ工夫して進めてくれました。

 業務の属人化が解消されていれば、欠員が出ても周囲がカバーできるので、男性育休を取っても混乱は起きません。ただ、仮に属人化が解消されてなかったとしても、私は男性による育休取得を推進していたと思います。

―― なぜでしょうか?

坂田 誰かが長期で休み、仕事に穴があく。このときこそが、生産性アップの大チャンスです。業務の棚卸しができるし、不必要な業務を削って、優先順位をつけざるを得なくなる。困難な状況に直面するからこそ、それを解決するために組織から一斉に知恵が出るんですね。そこでさらに休んでいた社員が帰ってきたら、生産性は10倍くらいになるのではないでしょうか。

 正直に言うと、もともと私は男性育休の義務化に反対だったんです。冷たい言い方ですが、男性育休も認められないような古い価値観の企業は、市場から淘汰されてもしょうがないと思っていたんです。でも最近は考えを変えて、男性育休という強い負荷がかかることで、ガラッと組織が変わる……多くの企業にその体験をしてほしいと思っています。

 私の場合は1992年に、県内の中小企業では珍しい完全週休2日制に移行し、年間休日を一気に31日増やしたときのことが、原体験として今の自分に影響しています。強い負荷を与えることで、組織が動き出すというのは、このときの経験で学んだことですね。

―― 「完全週休2日制に移行した」ときの経験をもう少し詳しく話していただけますか。