「男性育休も女性活躍も人が足りないから無理」。そんな常識を覆している中小企業2社のトップに話を聞きました。今回は金属加工業シンコーメタリコン(滋賀県湖南市)、立石豊代表取締役です。「D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)はそこまで気にしていない」と話す、その真意を聞きました。
【1】「男性は育休よりも働いて」中小企業の悩み、解決策は
【2】意欲ある女性は大企業へ? 中小企業の女性活躍どう推進
【3】サカタ製作所 男性育休100%でも現場混乱ゼロの理由
【4】「気づいたらD&I先進企業」 社員愛から始まった改革 ←今回はココ
業種…金属加工業
社員数…81人
男性育休取得率…100%
女性役員の数…1人
トップ自ら「イクボス宣言」
日経xwoman(以下、――) 育休中の社員が子どもを連れて会社を訪れる制度や男性社員の連続育休制度など、女性活躍や男性の育休を促進するための独自制度が多くありますね。特に育休中の「子連れ“出勤”」というのは珍しいです。
立石豊代表取締役(以下、立石) 育休中に子どもを会社に連れてきてもらうのは、2011年から行っています。円滑な職場復帰と子育てに関する職場の理解を深めるのが狙いです。育休中の社員が、私や先輩社員とおしゃべりをして、育休中の不安、仕事と家庭を両立させるコツなどを話し合う場です。月に1回、社員の都合のいい日時に、赤ちゃんと一緒に来てもらうようにお願いしています。
職場のメンバーに赤ちゃんを見せて、抱っこしてもらうなどしてコミュニケーションを図ることが肝です。職場復帰した後、子どもが急に熱を出して退社しなければならない、といったことは必ず起きます。そんなとき、赤ちゃんの頃に毎月会っていた子は、もう身内みたいなものですから、「大変だね、早く行ってあげなさい」というムードに自然になる。
社員が赤ちゃんを知ることができる。例えば、復帰後に赤ちゃんに急な発熱があっても、職場での理解を求めやすい。
組織が社員に仕事と子育てを両立できる環境を提供することを明示する「イクボス宣言」をした18年には、始業時間などをスライドできる「スライドワーク」制を導入しました。本社周辺の小学校は集団登校なのです。親が子どもを集合場所に送り、見送ると、どうしても10分、15分、会社の始業時間に間に合わないというケースが出てくる。そこで、希望する社員は、始業時間をスライドできる形にしました。短時間勤務制もこの時期に導入しました。
19年に当社初の女性取締役(玉置千春取締役広報部長)を任命しました。子育て中の社員はもちろんそれを支える社員も安心して働ける体制づくりを彼女が進めています。その取り組みがイクメンプロジェクト(厚生労働省が立ち上げたプロジェクト)で評価され、彼女は「イクボスアワード2019」のグランプリに選ばれました。
男性社員の育休「強制取得」
―― 父親が取得できる、7日間連続の男性育児休暇取得制度もあります。