肝心なのは社員を思う気持ち
立石 当時は、社員が働きすぎて疲弊することのほうに危機感を持っていたので、予期しない副産物でした。ただ、連続休暇だからこそ、それを生み出すことができました。「分けて休む」では、その人が戻るまで待つことができてしまい、意味がないですからね。
―― 話を聞いていると、経営者としての社員への愛が、結果としてD&Iとしての取り組みにもつながってきているように感じます。
立石 その通りなんです。正直、「D&I先進企業」と言われてもピンときませんね。もともと社員1人ひとりを大切にしてきました。年一度の社員旅行の行き先はすべて海外で、旅費は全額会社負担、事業の儲けは決算賞与として社員に「山分け」です。誕生日には現金10万円を支給します。
「社員の働きやすさ」という視点が欠けていたのかなと思います。なんとかするためにさまざまな社員の声に耳を傾けると、女性が働くための環境整備が足りないとか、子育て世代の男性が働きやすい制度がないとか、足りない点に気づくようになったんです。それを改善していたら、自然とD&Iの先進企業として見られるようになっていました。
D&Iと言われてもピンとこない。社員に気持ちよく働いてほしいと思い、ヒアリングを重ね、制度を作る中で自然とホワイト企業になっていた。
―― そうした、いわゆる「ホワイト」な企業としてのイメージは、どんなところで役立っているのでしょうか。
立石 当社は地元の学生を中心にリクルート活動を行っています。イメージはよりよい人材を獲得する面でも武器になっています。そもそも、社員が働きやすい環境、モチベーションが上がる環境を提供すれば、社員は120%の実力を発揮してくれる。その結果が利益につながりますし、儲かったなら、決算賞与でできるかぎり社員に還元する。それによってまたモチベーションが上がる……という循環が生まれています。
―― ただはやっているからと言って、制度を作るのでなく、社員が本当に望んでいることへの理解の深さを感じました。そもそも、何が大変なのか分からない管理職や経営者もいる中で、なぜ、深い理解ができるのでしょうか?