「おしりのトリセツ」第2回は、正しいおしりの洗い方と拭き方についてクローズアップ。「おしりを清潔にしようとして、よかれと思って洗いすぎ・拭きすぎている人が多い。強く刺激することで肌の皮脂膜が失われると免疫機能や再生力も損なわれ、細菌やウイルス感染、痔の悪化にもつながる」と、皮膚科にも詳しい大阪肛門科診療所副院長の佐々木みのりさん。あなたのおしりとの付き合い方を見直してみよう。

第1回 間違ったおしりのケアがかゆみを招く
第2回 正しいおしりの拭き方とは?2週間、「洗う」のはやめる ←今回はココ
第3回 脱「出残り便秘」で痔も改善してくる 

おしりの洗いすぎはかゆみや痛みの原因に

 おしりを清潔にしようとするあまり、洗いすぎることによって、肛門のかゆみや痛みの原因となる皮膚の炎症を起こす人が増えているという。前回の「洗いすぎチェック」をやってみて、自分がなにげなく続けていた習慣が「洗いすぎ」に当てはまっていたことに気づき、驚いた人もいるかもしれない。

「肛門の皮膚はとてもデリケートで、ステロイド軟膏などの薬の成分の浸透率も、おでこの20倍とされるほど。しかし、日ごろ目で見ることができないために異変が起こっていてもそれが自分のケアの間違いだと気づかない場合が多い」と、大阪肛門科診療所副院長の佐々木みのりさんは注意を促す。

注)ステロイド剤の吸収率は、腕の内側を1とすると、男性の性器(陰嚢)では42。肛門は陰嚢よりも皮膚が分厚いため、42倍よりも吸収率は多少低くなるが、吸収率は高いと推察される。

 おしりを洗いすぎると、最初に感じることが最も多いのが「かゆみ」だという。かゆいのは不潔にしていたからだと思って余計に熱心に洗うようになる。すると、肛門周囲の皮膚が傷ついてかゆみが増してくる。「指でかきこわすようになり、『かゆい』がひりひりした痛みに変わる」(佐々木さん)。

 すると、温水便座で洗浄するときに飛び上がるほどしみるように。ムズムズする、ベタベタする、ぶつぶつができている、股が痛くてしゃがめないなど症状が悪化していく。

 「肛門科を受診しづらいから、と、膣カンジダ症の治療薬である抗真菌薬や、デリケートゾーン用の市販軟膏で対処する人もいますが、一瞬効いたように思えても、原因の洗いすぎや出残り便秘が改善されないかぎり、かゆみは繰り返します。適切ではない薬を使い続けると皮膚が薄くなってしまい、ちょうどよい便が出ても、おならが出るだけで肛門が切れてしまう、といった弊害が起こります。デリケートな部分ですから、悪化した場合のステロイド剤の使用についても専門家の見極めが重要。セルフケアは2週間まで。それでも症状が改善しない場合は、受診をして適切な薬を処方してもらうことが大切です」(佐々木さん)。

 洗いすぎた皮膚がどうなっているか下のイラストで見てみよう。

洗いすぎるとバリアが低下 神経が伸びて過敏に

バリアの正常な皮膚
バリアの正常な皮膚
肌バリアが刺激物の侵入、乾燥から守る

 皮脂膜が適度に皮膚の表面を覆うことによって、細菌やウイルス、刺激物などの内側への侵入を阻み、水分の蒸発を防ぐ。バリア機能が正常であれば、少し傷ついてもスムーズに再生される。

バリアが低下した皮膚
バリアが低下した皮膚
こうなると、かゆみやひりひりを感じるようになる

 洗いすぎ、拭きすぎによって皮脂膜が失われ、バリア機能が低下して、むき出しの状態になっていく。そうなると皮膚内部が乾燥して炎症が起こり、神経が皮膚表面まで伸びてきて、かゆみや痛みを感じやすくなるほか、病原体なども侵入しやすくなる