油田掘と露天掘の質問法の違い
画家が「風景画です」と答えるところまでは同じですが、この答えの次に問いかける質問から展開が変わっています。露天掘のケースでは、この次に「何枚くらいの作品になりますか?」という質問を続けました。絵のジャンルについての答えは既に引き出せたと判断し、次は「量」を聞く質問に移っています。そして、作品の点数が1万点ほどだと分かると、「絵を描くのは楽しいですか?」と、また別の質問に移っています。次々と違う質問に移動し、広く浅く聞いているのが分かると思います。
一方、油田掘メソッドを活用したケースでは、「風景画とは、主にどんな場所を描くのですか?」と、「風景画」についてさらに掘り下げて聞いています。画家が「下町の風景」と答えると、「下町の風景に思い出が?」と続け、風景画の話をずっと掘り下げています。一つの話題を深く掘り下げていくのが、油田掘の聞き方の特徴となります。
そして、気付いたでしょうか。油田掘メソッドでは、必ず「相手の答えに含まれていたキーワード」を繰り返しながら、次の質問をしているのです。
「下町の風景です」→「下町の風景に何か思い出が?」
「それを描き残していきたいと思いまして」→「描き残そうと思ったきっかけは?」
このように、相手の発したキーワードを拾い、それをおうむ返しのように繰り返しながら次の質問をしていくのが、油田掘メソッドで最も重要なテクニックです。こうすることで、相手の「自覚していない」思考や本音を引き出しやすくなるのです。この2つの会話例を見ても、油田掘メソッドを使って聞いたときのほうが、同じような質問数でも画家の本音をより深く引き出せているのが分かるでしょう。
いかがでしたか? 油田掘メソッドの基本的な考え方を紹介しました。次回は現場でよりスムーズに実践するために、知っておくべきメソッドの極意とも言える部分に触れ、さらに特徴を深掘りしていきたいと思います。
著者:牛窪 万里子
編集:日経xwoman
発行元:日経BP
定価 :1650円(10%税込)
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【内容】
インタビュー歴27年 元NHKアナウンサー 牛窪万里子さん直伝! 相手の言葉を「掘る」だけで攻略可能に。
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相手の隠れた本音を引き出し、相手の「無意識」を意識化する「油田掘メソッド」を用いた新・ヒアリング攻略本。
第1章 基本編 相手の本音を引き出す「油田掘」メソッドとは?
第2章 応用編1 相手の本音を導くウオーミングアップ
第3章 応用編2 よくある行き違いへの対処法
第4章 応用編3 相手のタイプ別に攻略法を変える(LABプロファイル入門)
第5章 実践編 油田掘&LABプロファイルは、こんなときも役立つ!
第6章 上級編 さらに上級者になれる会話のコツ
構成/日経xwoman編集部 牛窪さん写真/本人提供 イメージ写真/PIXTA