ニューヨークで築いたキャリアを糧に越前市で活躍するクリエイター・三木あいさん。その豊かな暮らしぶりに興味を持って、国内外からの友人がひっきりなしに越前市を訪れるそう。

vol.2 三木あいさん(37歳)●グラフィック・テキスタイルデザイナー/イラストレーター

 共働き率全国ナンバーワン(※)で、かつ出生率も全国上位を維持するなど、女性が産みやすく働きやすい環境が整っていることで有名な福井県。その中でも中央部に位置する越前市は、女性の就労や子育てについて、とりわけ手厚い支援体制があることで知られている。

 今回は、ニューヨークで学んだデザインの技術と経験を生かし、越前市の伝統技術の魅力を国内外に発信するデザイナーの三木あいさん(37歳)に、キャリア形成と子育て環境について聞いた。

ニューヨークからの華麗なるUターン

 「私にとって地元に帰ることは人生の縮小ではなくて、一番の目的だったんですよね」。こうにこやかに話すのは、越前市にいながら国内外の仕事をこなし、子育てに趣味にと奔走する三木あいさん。

 大好きな絵本の影響で3歳のときから高校生までずっと、「絵描きになる!」という夢を持ち続けていた三木さん。高校を卒業後、金沢国際デザイン研究所で2年間留学の準備をし、ニューヨークのパーソンズ美術大学に合格。グラフィックデザインとイラストレーションを学んで卒業した後、ニューヨークのデザイン会社でテキスタイルデザイナーとして5年間のキャリアを積んだ。

 「学生時代から8年間暮らしたニューヨークには、アートも刺激も飲み歩くお店もいっぱいあって、華やかで楽しくて、すごく自分に合っていると感じていました。仕事も生活も恋人も、当時の私のすべてがニューヨークに根付いていたんです。

 でもその一方で、友人たちにはいつも越前の話をしていたし、『30歳までに私は越前に戻るでの』と越前なまりで宣言して。ニューヨークの先に、いつも越前市を見ていました」

 28歳のとき、ワーキングビザの手続きでトラブルが発生し、急遽帰国。

 「ニューヨークに戻れないと決まったときは本当に辛くて、泣いて、泣いて。でも、勤務先のボスが『トラブルの責任は自分にもある』と、越前市に戻ってから2年間、フルタイムで仕事をさせてくれたんです。日本時間の夜10時から朝8時までSkypeを繋ぎっぱなしにして、それまでと同じように会話をしたり、オンラインで作品を送ったり。インターネットさえあればどこにいても世界とつながって仕事ができるんだと、あらためて実感しました」

 ニューヨーク在住の恋人ともSkypeを通じての遠距離恋愛を続行。帰国してから2年後に将来のことを話し合った結果、恋人が越前市に移住し、婿入りすることに。子どもも生まれ、現在は三木さんが生まれ育った家で家族3人で暮らし、三木さんは自宅の一室を仕事部屋にし、フリーランスのデザイナーとして活動している。


※ 福井県の共働き率56.8%、全国平均45.4%(総務省「平成22年度国勢調査」より)