家族も地域も、子育てを全力応援!

 高原さんは27歳のとき、越前市出身の男性と結婚し、2年前に長女を出産した。出産の約1カ月前から産休に入り、1年間の育休を取得した。「試験室は私を含め2人で切り盛りしていますから、同僚に迷惑をかけないよう、出産ギリギリまで働こうと思っていたんです。でも、お腹の子どもが小さかったこともあって、産科の先生に叱られて急遽、予定よりも1週間早く産休に入ることになりました。社長も同僚も『そういうことなら休んだほうがいい』と、快く送り出してくれたので、安心してお休みをいただけました」

 井上リボン工業には子育て経験者や、子育て真っ最中の女性社員が多い。そんな先輩ママ社員たちのアドバイスが、高原さんの子育てを支える大きな力となっている。「子どもができるまではまったく知らなかったのですが、越前市では、出産前に保育所の入園予約をしておくのが普通なんです。そのおかげで、娘が1歳になってすぐに自宅近くの保育園に入園できたので、スムーズに職場復帰できました」

 家族も高原さんの子育てを応援する強い味方だ。実家までは車で10分ほど。高原さんの両親は現役で仕事をしているため、育休中は実家で祖母と過ごすことが多かった。

 「一緒に娘の世話をしているとき、祖母は昔の子育てについてたくさん話をしてくれました。娘の発熱で私がオロオロしていると、祖母が『それくらいなら様子を見ていれば大丈夫』と教えてくれてほっとしたり。育休中、昼間は娘と2人きりになってしまいがちなので、近くに相談できる身内がいたので、すごく心強かったです」

 越前市が運営する「地域子育て支援センター」にも毎日のように足を運んだ。地域子育て支援センターとは、保育士や専門の職員から子育てについてのアドバイスをもらったり、子どもを遊ばせたりできる施設。ここで開催される「6カ月未満の子どもだけの運動会」や「子連れで参加できるお菓子教室」などのイベントに、高原さんはたびたび参加した。

 「支援センターにいるのは同じ境遇の人ばかりなので、子連れでも気兼ねなく出かけられました。いつ行っても話し相手がいるのがうれしかったし、いろんな情報ももらえて、私にとってはすごくありがたい場所でした」

高原さんは、終始、素敵な笑顔でお話ししてくれたことからも、仕事もプライベートも充実していることがうかがえる。「周りの方のサポートがあったから」と常に感謝を忘れない
高原さんは、終始、素敵な笑顔でお話ししてくれたことからも、仕事もプライベートも充実していることがうかがえる。「周りの方のサポートがあったから」と常に感謝を忘れない

越前市の“目と手”が一流メーカーとの取引を支える

 井上リボン工業の製品は国内有名アパレルメーカーや下着メーカーにも供給されているため、取引先と同等の厳密な製品試験が要求される。

 「取引先とは4年に一度、“目合わせ”と“手合わせ”をします。これは、私たちの目や手の感覚を確かめ、各社が求めるレベルでの検査ができているかどうかを確認するための制度です」

 この手続きを経て、認定を受けた検査員2人がすべての商品を厳しくチェックする。仕事量は出産前と変わらないが、「今は保育園のお迎えがあるので、残業しても30分程度。時間制限がある分、以前より効率よく仕事ができるようになりました」と、高原さんは余裕の笑みを見せる。

 「検査員は2人とも子育て中の30代女性ですが、もっと若い目や手が入ったら、試験精度も向上すると思うんです。そのためにもいつか、試験室の後継者を育てることが、今の私の目標です。 試験室の業務はモノづくりではないので、会社の利益には直結しません。でも、きちんとした商品を市場に届けることでお客さまの信頼を得られれば、遠回りかもしれないけれど、それが利益につながるはず。そう信じて、毎日仕事をしています」

取材・文:市原淳子  撮影:新山貴一(ブロウアップスタジオ)

高原さんが働く井上氏本工業は、衣料はもちろん、ラッピング用や工業資材用など様々なリボンを提供している。さらにリボンの可能性にチャレンジする「リボンプロジェクト」では、巻きリボンの美しい断面を立体に展開したボウルや、パイル地のランチョンマットなどを開発している
高原さんが働く井上氏本工業は、衣料はもちろん、ラッピング用や工業資材用など様々なリボンを提供している。さらにリボンの可能性にチャレンジする「リボンプロジェクト」では、巻きリボンの美しい断面を立体に展開したボウルや、パイル地のランチョンマットなどを開発している
福井県越前市で働く
越前市には、認定こども園と保育園が私立・公立合わせて計24園ある。認定こども園とは、幼稚園と保育園の両方の機能をあわせ持ち、地域の子育て支援も行う施設のこと。保育園では通常の保育のほかに、延長保育、休日保育、一時預かりなどがあり、柔軟な対応で働くママやパパを応援する。
* この記事の年齢、役職などは取材時のものです

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