越前市に生まれてからずっとこの地を離れずにいたのは「やりたいこと」があったから。今は後に続く後輩のために、仕事と子育てを両立できる女性技術者のロールモデルを目指す。

vol.7 中野さおりさん(32歳)●オーディオテクニカフクイ・技術部 技術課

 共働き率全国ナンバーワン(※)で、かつ出生率も全国上位を維持するなど、女性が産みやすく働きやすい環境が整っていることで有名な福井県。その中でも中央部に位置する越前市は、女性の就労や子育てについて、とりわけ手厚い支援体制があることで知られている。

 今回は、越前市屈指の最先端のモノづくり企業で技術職として働く中野さおりさん(32歳)に、仕事のやりがいやこの街での子育て事情、現在のライフスタイルなどについて聞いた。

高専のインターンシップで「近所の会社」の魅力を発見

 「越前市の実家から、学校も、職場も、結婚後の住まいも、すべて数キロ圏内なんです」

 そう笑顔で話す中野さおりさんは、生まれも育ちも越前市。今は技術職の仕事と3人の子育てに日々奮闘中だ。

 そんな中野さんが技術職を目指そうと考え始めたのは、中学生の頃。

 「ある学生服のテレビCMを見たら、キャラクターのドラえもんが3Dになっていてびっくりしました。“これはすごい!”と衝撃を受けて、自分もパソコンや3Dの制作に携わる仕事がしたいと思ったのです」

 その理想に近づくために、中学卒業後は福井県内にある国立の工業高等専門学校の電子情報工学科に進学。高専は基本的に5年制だが、4年生の夏休みに実施されるインターンシップの訪問先として選択したのがオーディオテクニカフクイだった。

 「実は、自宅の近所にある会社で、子どもの頃から何をしている会社なのか気になっていたのです。近くて通いやすいこともあって、ここに決めました」

 オーディオテクニカフクイは、日本を代表する音響機器メーカーであるオーディオテクニカの製品開発・製造部門として、1970年に越前市に設立された会社だ。最先端のデジタル技術を駆使し、世界トップクラスのシェアを誇るワイヤレスマイクやヘッドホンをはじめとする音響関連機器やレーザー応用機器などの設計開発・製造を行っている。

 同社での職業体験を通して、「ここなら自分のやりたいことができる」と確信。社内の和気あいあいとした雰囲気も好印象だったため、入社を希望し、試験を受けて高専卒業後に晴れて社員となった。

※ 福井県の共働き率56.8%、全国平均45.4%(総務省「平成22年度国勢調査」より)