インターンを経て、大学卒業後に五十嵐製紙に就職。一人前の和紙職人になるために修行しながら、地域の若手伝統職人とともにプロジェクトも進めている。
vol.14 古澤 花乃さん(25歳)●五十嵐製紙

越前和紙に宿る伝統と新しさを目にして、紙漉きを志す
共働き率全国ナンバーワン(※)で、かつ出生率も全国上位を維持するなど、女性が産みやすく働きやすい環境が整っていることで有名な福井県。その中央部に位置する越前市は、女性の就労や子育てについて、とりわけ手厚い支援体制があることで知られている。
今回は越前市にIターンし、新卒で「五十嵐製紙」に入社した古澤花乃さん(25歳)に、仕事のやりがいや移住後の暮らしなどについて聞いた。
2人1組となって、大きなふすま用の和紙を手際よく漉いていく。その姿はとても手慣れているように見えるが、「ベテランの職人が10だとすると、自分はまだ2か3のレベル」と話す古澤さん。現在、和紙職人を目指して、越前和紙を生産する五十嵐製紙で見習い中だ。
兵庫県で生まれ育った古澤さんは、京都にある芸術大学の日本画コースに進学。将来的には「絵を描くことを仕事にしたい」と考えてのことだった。そして、大学で学ぶうちに伝統工芸に興味を持ち始め、就職活動の際に先生に相談。仕事として成り立つのかどうか聞いたところ、「伝統工芸の職人は一人前になるまでが大変。それまでの間、ひとりで生活していくことは難しい。でも、モノづくりの町として有名な福井県越前市なら、伝統工芸の若手後継者を育てるための制度や助成があるから可能性はあると思う」との回答を得た。
先生の勧めもあり、1500年の歴史を誇る越前和紙のインターンシップに応募。4年生の夏休みに、インターンを受け入れている五十嵐製紙で1カ月間、研修を受けることになった。
五十嵐製紙は、和紙業者が軒を並べる越前市の今立五箇(ごか)地区において、100年以上も紙漉きの技を継承する老舗工房。機械漉きや手漉きでのふすま紙を主力としながら、デザイン性の高い創作和紙をはじめ、ガラスに和紙をはさみ込んだ「和紙ガラス」、あたたかな光を放つ照明「和紙あかり」など、オリジナリティあふれる作品や商品を積極的に展開している。
2018年、インターンとして同社を訪れた古澤さんは、そこで越前和紙と出合い、まず驚きを感じたという。
「それまで和紙といえば、小さくて無地で真っ白というイメージを持っていました。ところが、五十嵐製紙で漉いていたのは、ふすまサイズの大きなもので、美しい模様が漉き込んであったり、絵画的だったりと見たことのないものばかり。和紙に対する印象が変わり、私にはとても新しいものに見えました」
越前和紙に奥深さを感じ、「ここで働きたい」という気持ちが湧いた。が、そのためには知り合いがいない越前市にIターンする必要がある。移住への不安はあったが、インターンの期間中、同社の人たちが「丁寧にあたたかく接してくれた」という安心感が背中を押し、伝統工芸の世界に飛び込むことを決意した。