住宅ローンに関する制度が大きく変わったのを知っていますか? 今年度から変わった点と、来年度からさらに変わる点があり、「住宅ローンを利用するなら、20年よりも22年以降よりも、21年の今年が有利」という状況が生まれています。住宅ローンに詳しい専門家に聞きました。

 多くが利用する住宅ローン。間違いなく「借金」だが、自動車ローンや消費者金融など他の借金と比べると、借り手に有利な借金といえる。理由は主に2つあり、1つは住宅という確かな担保があるために、金利が非常に低いこと。金利が史上最低水準まで下がった日本なら、住宅ローンを1%未満の金利で借りることはたやすい。

 もう1つの理由は、景気対策という意味合いもあり、住宅を購入する人向けの支援制度がいくつも用意されていることだ。代表的な制度が「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」で、住宅ローンの残高に応じて所得税や住民税の還付が受けられる。金利負担を軽減することで、国民の住宅の取得を後押しする意図で導入されている。

 この住宅ローン控除が、21年から大きく変わり、22年以降はさらに大きく変わる可能性があることを知っているだろうか。そして実は、この制度改正により、21年が「20年より有利になった」点と、「22年以降はやや不利になるかもしれない点」が存在する。人によっては今年が最も、住宅購入への税制優遇が大きい「ゴールデンイヤー」となる可能性があるのだ。

 「既に家を買う予定で、条件を満たす人にとっては、『21年11月まで』に契約を済ませると、一番有利かもしれません」と語るのは、住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーの平野雅章さんだ。

 今年および来年の制度改正がどんなもので、どんな人にとって有利になるのか、詳しく見てみよう。

家を買うなら、税制的には今年が有利?
家を買うなら、税制的には今年が有利?

住宅ローン控除ってどんな制度?

 改正内容を解説する前に、まず現時点での住宅ローン控除とはどういう制度なのかについて、おさらいしておこう。

 住宅ローン控除とは、要件を満たす住宅を購入してから10~13年間、ローン残高に応じて所得税や住民税の還付がある制度だ。

 入居から10年間は、毎年末のローン残高の1%分の税金が還付される。年末のローン残高が3000万円なら30万円が戻る。なお毎年の還付額には上限があり、新築なら40万円(所定の性能を満たす「認定住宅」は50万円)、中古なら20万円(「認定住宅」は30万円)となる。所得控除ではなく「税額控除」で、住宅購入者の所得税率に関係なく、還付金額は全員共通で1%分だ。

 入居から11年目以降は、「消費税10%で購入した人」だけが還付対象となり、還付額は「ローン残高の1%」か「建物購入価格×2%÷3」のどちらか少ないほうの金額となる。消費税10%で購入した人というのは、「個人ではなく企業から家を買った」人のこと。中古物件を個人から買う場合は消費税がそもそも発生しない。

 11年目以降のローン控除は、消費税が10%に引き上げられた際に、その負担増をカバーするために導入された制度。そのため、特に消費増税で負担が増えていない個人間取引は対象外だ。

 そして住宅の消費税は土地部分にはかからず、建物部分のみ。つまり先ほどの「建物購入価格×2%÷3」という計算方法は、建物部分の消費税が8%から10%に、2%上がった分を、購入11年目からの3年間かけて還付する、その1年分の金額、という意味になる。

 これが20年以前から続く、現状の住宅ローン控除制度の概要。では21年に改正された部分とは何か。

「住宅ローン控除」の概要
・入居から10年間は、毎年末のローン残高の1%分の税金を還付(上限は年に新築40万円、中古20万円)

・消費税を払って買った物件の場合、11年目から13年目まで、「毎年末のローン残高の1%分」と「建物購入価格×2%÷3」のうちの少ないほうの金額を還付