ハラスメント防止対策は、企業の急務となっています。すべての企業に具体的な対応が求められる中、近年増えているのが、部下から上司へのハラスメント“逆パワハラ”。ハラスメント問題に詳しい弁護士の井口博さんは、「主に上司への不満や妬みが原因で起こるトラブルですが、女性上司への逆パワハラはジェンダーバイアスが根底にあることが多い。対策を怠ると、管理職への昇進意欲を失わせるなど会社にとっても損失になります」と注意を促します。ハラスメント対策は、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進にも関わる重要な施策の1つ。押さえておくべき最新ハラスメント情報と具体的な対策を井口さんが解説します。
(1)部下が上司に嫌がらせ 逆パワハラを防ぐ3つの方法 ←今回はココ
(2)サイバーハラスメントとネット中傷 企業のリスク対策
(3)対策の遅れは深刻な事態に 最新ハラスメントニュース
2022年4月から「労働施策総合推進法」、いわゆる「パワハラ防止法」の改正が施行され、中小企業も含めたすべての事業主に適用されました。大企業では2020年6月から適用されており、罰則規定はありませんが、会社が対策を怠れば損害賠償責任を問われる場合もあります。
ハラスメントに対する社会の目がますます厳しくなる中で、どのようにパワハラを防止すればよいのか分からず、対策に苦労している中小企業も少なくないのではないでしょうか。また、既にハラスメント研修を受けている大企業の管理職にとっても、部下から突然パワハラを訴えられたらどうしようなどと不安が残っていると思います。
研修などで、管理職はパワハラの加害者にならないための教育を受けますが、「ハラスメントは職務上の地位にかかわらず、誰でも加害者になり被害者になりうる」という視点を持つことが大切です。実際に近年、管理職がパワハラの被害者になるケースも増えています。
管理職が受けるパワハラ被害は、2種類あります。1つは管理職の上司からのパワハラですが、もう1つやっかいなケースが「部下からの逆パワハラ」といわれるものです。具体的には、どのようなケースがあるのでしょうか?
