前回紹介した「プロバイダ責任制限法」以外にもハラスメントに関わる改正法や判決が、近年次々と出ています。「ダイバーシティ(多様性)推進のためには、女性活躍を推し進めるだけでなく、男性の働き方、人間関係上の立場の優位性が原因で起こりやすいハラスメントへの意識を変えていくことも大切」と弁護士の井口博さんは言います。連載の最終回では、元裁判官でハラスメント問題に詳しい井口さんが、最低限知っておきたい法改正情報や、非正規雇用・有期労働契約社員へのハラスメントについて解説します。

(1)部下が上司に嫌がらせ 逆パワハラを防ぐ3つの方法
(2)ネットで中傷されるサイバーハラスメント 職場の対策は
(3)上司の知識不足がハラスメントリスクに 知るべき法改正 ←今回はココ

「改正育児・介護休業法」が2022年4月1日から順次施行

 みなさんは近年改正が続いているハラスメントにも関わる法律や判決を「人事担当が知っておけば十分」と思っていませんか? 組織が潜在的に抱えるリスクは、従業員がこのような法律や判決を知らず、気付かないうちにハラスメントを起こしてしまうことです。今回は、「改正育児・介護休業法」「改正公益通報者保護法」、そして、フリーランスへのセクハラに関する企業責任認定判決について取り上げます。

 例えば、あなたの部下の男性社員が「今度、産後パパ育休、取っていいですか」と聞いてきたとき、「産後パパ育休って何?」となってしまっては、上司として失格です。また、有期労働契約の社員が「育休を取りたいのですが」などと言ってきたとき、「パート社員が育休なんて、そもそも無理です」と答えるのも同じく知識不足。このような発言はハラスメントにもなりかねません。

 2021年6月、男女ともが仕事と育児を両立できるように、育児・介護休業法が改正されました。この改正法は22年4月1日から順次施行されています。

 改正育児・介護休業法のポイントは次の5つです。

(1)産後パパ育休制度の創設
(2)有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
(3)育児休業の分割取得
(4)(企業向け)雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
(5)(企業向け)育児休業取得状況の公表の義務化

 このうち、(2)と(4)は22年4月1日から施行されています。(1)と(3)は同年10月1日、(5)は23年4月1日から施行されます。

 (1)産後パパ育休制度の創設と(2)有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和について解説していきます。

「男性社員から『産後パパ育休を取りたい』、有期労働契約の社員から『育休を取りたい』と相談されたとき、『何それ?』『そんなの無理でしょ』という発言は、上司として知識不足。ハラスメントにもなりかねません」(井口さん)
「男性社員から『産後パパ育休を取りたい』、有期労働契約の社員から『育休を取りたい』と相談されたとき、『何それ?』『そんなの無理でしょ』という発言は、上司として知識不足。ハラスメントにもなりかねません」(井口さん)