重厚長大産業で理系人材が多く活躍する鉄鋼・非鉄金属業界では女性社員が少ない現状があります。業界特有の課題にどう向き合っているのか、昭和電線ホールディングス(HD)代表取締役社長の長谷川隆代さんに話を聞きました。
(上)昭和電線HD社長「実力重視」だけで女性管理職育たない
(下)昭和電線HD・長谷川隆代 私が仕事を辞めなかった理由 ←今回はココ
女性社員に挑戦の機会を
編集部(以下、略) 昭和電線HDに限らず、業界全体として女性社員の数はまだまだ少ないです。
長谷川隆代さん(以下、長谷川) そこがまさに業界の課題だと思います。私が管理職になる前の話になりますが、学会などで他社の女性研究員を見かけることはありました。ただ、何年かするとほとんどの人が退職していて、研究開発を長く続ける人は少なかったですね。
―― 長谷川さん自身はなぜ長く勤め続けられたと思っていますか?
長谷川 あまり周りの目を気にしなかったからかもしれません。会社で偉くなる必要はないし、仕事が楽しかった。それに現実的に考えたときに、この業界に限らず、研究開発部門のリーダーとして女性が活躍できる場はあまりありません。他の会社や研究機関に移ったとき、同じように発案したことがどんどん実現できるような仕事をさせてもらえるかというと難しい。自分は今そういう立場で楽しく仕事ができていて、かつ自分が思い描いた通りの結果が出せている。だったら辞める必要はないなと思いました。
振り返ると、「管理職をやってください」と言われたとき、「やってみます」と挑戦したことが良かったのかもしれません。もし男性の上司の下にずっといたとしたら、そこまで自分の思うようにはできなかったでしょう。一般社員のままだったら、きっと続かなかった。裁量と権限が与えられ、自分のやりたいことができるポジションに早い時期に就かせてもらったので、辞めなかったのかもしれないですね。
―― 女性初の管理職で、当時、長谷川さんを抜擢(ばってき)したほうも勇気が要ったのでは。
長谷川 成果という一点で評価すれば、女性でも男性でも外国人でも会社としては関係ない。会社はその人に与えたチャンスと権限と仕事の内容に対して、パフォーマンスを見ていけばいいだけだと思っています。当社にも、女性という色眼鏡で見ることなく、私がやってきたこと、出てきたアウトプットだけを純粋に見てくれた人がいたのでしょうね。
今の女性社員にも、このときの私と同じようにチャンスを与えることが大切だと思っています。