各業界で活躍する女性リーダーに、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I、多様性と包摂性)の視点から、人材育成や構造改革における取り組みや課題を語ってもらう本連載。今回は、亀田製菓常務取締役グループ会社・ダイバーシティ担当、古泉直子さんに同社の女性活躍推進の取り組みを聞きました。
(上)亀田製菓「私なんて」と昇進打診された人が言わない理由 ←今回はココ
(下)取引先の急な要望…「わが社」だけで難しい女性活躍推進
編集部(以下、略) 古泉さんは創業家の出身ですが、入社時にどんな印象を持ちましたか?
古泉直子さん(以下、敬称略) 小さいころから亀田製菓を見て育ち、楽しそうに働く人が多い会社だなと感じていましたが、実際に入社したことで人柄のいい人が多いということをより強く感じました。業界では「人の亀田」と呼ばれるくらい、社員を大切にする会社です。
―― 2018年にグループ会社・ダイバーシティ担当に就任しています。女性活躍推進や組織の多様性のための取り組みは、古泉さんの就任以降に始動したのでしょうか?
古泉 それまでは、女性活躍担当(課長クラス)の女性が、1人で担当していました。18年からは私が加わったことで経営陣と直接のつながりができ、19年にトップが「ダイバーシティ元年」とすることを宣言しました。取り組みの効果は出始めており、管理職における女性比率は、22年7月現在で15.6%です。
ただ、当初は試行錯誤の連続でした。実は私も就任時点では「D&I」の意味を分かっておらず、「ダイバーシティとは?」という状態からスタートでした。まずは、キユーピーさん、マルハニチロさんといった同業の先進企業の門をたたき勉強しました。
―― 行動力がありますね。亀田製菓は女性が管理職として活躍できる雇用環境の整備を行っていますね。「管理職を目指す女性が少ない」という課題があったそうですが、変わってきていますか?
古泉 はい。例えば、22年7月に3人の女性社員(コーポレート部門2人、ライン部門1人、いずれも30~40代)が課長昇進となりました。彼女たちのマインドは非常に前向きです。
それまでは、昇進を打診しても「私なんて……」と謙遜してしまい、マネジメント側から「大丈夫、あなたならできますよ」という、マインドセットのサポートを行う必要のある社員もいました。しかし今回の新課長たちは、昇進を「いつか来るもの」として自然に受け入れていました。
―― どんな施策を行ったのでしょうか?
