各業界で活躍する女性リーダーに、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂性、D&I)の視点から、人材育成や構造改革における取り組みや課題を語ってもらう本連載。今回登場するパナソニック ホールディングスの少德彩子さんは、同社の創業100年を超える歴史上初めての生え抜きの女性取締役執行役員で、グループ・ゼネラル・カウンセルを務めています。ゼネラル・カウンセルとは、弁護士資格を有する法務担当役員のこと。まさに「法務のプロフェッショナル」である少德さんですが、そのキャリア構築には紆余曲折(うよきょくせつ)がありました。
(上)諦められず単身渡米 メーカーで法務キャリア積む決心 ←今回はココ
(下)男性が圧倒的多数の電機業界 女性活躍進めるためには
多数派男性の「圧」 老舗電機メーカー役員の会合で実感
編集部(以下、略) 2022年6月、少德さんは創業以来初の生え抜きの女性社員として取締役に就任しました。100年超の歴史を持つ電機メーカーで重責を担う立場になり、どのようなことを感じていますか?
少德彩子さん(以下、少德) 今年初めてグループの役員が集まる合宿に参加しましたが、女性は私1人。私は鈍感力があるほうですが、それでもマジョリティーによる圧を感じました。社内では、部門によって女性が圧倒的少数という職場も少なくありません。今は会社としてそうした女性同士をつなげるネットワークづくりにも取り組んでいます。職場内で孤立せず、組織全体で同じ思いをしている女性たちの存在を身近に感じられることが大切だと思っていて、そういった組織の環境づくりを大事にしたいと思っています。
―― 少德さんは事業会社でダイバーシティ担当役員を務めた経験があるのですね。
少德 17年4月から2年間、コネクティッドソリューションズ社(現パナソニック コネクト)でリーガルセンター所長と同時に、ダイバーシティ担当役員も務めていました。樋口泰行(パナソニック コネクト社社長)が再入社をして、上司になったことがきっかけです。
樋口は、組織改革していくための一丁目一番地、第1ステップは風土改革だと考えていました。その風土改革の一つの要素であるダイバーシティの担当役員をやってくれと言われ、キャリア採用で入ってきた女性役員とともに携わることになったのです。
―― 最初は乗り気ではなかったとか。
少德 パナソニックは01年、女性かがやき本部を設置し、経営戦略として女性登用を積極的に推進しました。当時私は「先輩社員の女性たちはスポットライトを浴びたいわけでもないのに、取り上げられて大変そう。私はできるだけ関与したくない」と思っていたんです。
ただ、そのとき一緒にダイバーシティ推進に取り組んだ女性役員は、女性活躍が非常に進んだ会社を複数経験していました。そんな彼女が「私たちは経営幹部になっているからいい。だけど、後輩たちはどうか。思い描いたキャリアが果たして実現できているのか。後進に対して私たちは責任がある」と言うのです。そういうことかと得心しました。
