人材を資産と見なす「人的資本」の考え方に基づき、政府は人材に関するさまざまな項目の開示を求める方針です。「男女の賃金格差」も、開示が求められている項目の一つ。そもそも賃金格差の解消に取り組んでいる企業は、どれだけあるのでしょうか。日経WOMANが上場企業などを対象に行った「企業の女性活用度調査」を基に検証します。記事後半では、企業が取るべき対策のポイントを、明治学院大学経済学部教授の児玉直美さんに聞きました。

格差是正の取り組みは「ない」が6割以上

 2022年7月に女性活躍推進法が改正され、今後、従業員301人以上の企業は、男女間の賃金格差を公表することが義務づけられました。賃金格差の開示のタイミングは「次の事業年度の開始日からおおむね3カ月以内」とされており、事業年度が4~3月の企業なら、22年4月~23年3月の実績を、23年6月末までに公表することになります。公表まであと1年もありません。

 では、企業の賃金格差に対する認識はどこまで進んでいるのでしょうか。日経WOMANが22年1~2月に、東証1部(当時)上場企業など535社から回答を集めた「企業の女性活用度調査」では、「正社員で、男女間の賃金格差是正のための、具体的な取り組みや仕組みがありますか」と質問。回答した535社のうち、「ない」と回答したのは324社で、全体の60.6%に上りました。また、「制度上、同じ役職の男女の賃金格差は存在しないから、是正のための取り組みもない」という趣旨の回答をした企業が42社(全体の7.9%)ありました。

出典/日経WOMAN「企業の女性活用度調査」2022年版。「格差がなく、取り組みもない」は自由回答の内容で判断し集計した。端数処理の都合で合計が100%を超えている
出典/日経WOMAN「企業の女性活用度調査」2022年版。「格差がなく、取り組みもない」は自由回答の内容で判断し集計した。端数処理の都合で合計が100%を超えている

 「賃金格差がなく、取り組みもない」とする企業からは、「男女同じ賃金表を使用している」(建設会社)、「職群、コース、役割、等級を基準とした給与体系で男女間の賃金格差が生まれない制度となっている」(製薬会社)などの回答がありました。

 日本では労働基準法で「男女同一賃金の原則」が定められており、性別を理由にして賃金に差をつけることは禁じられています。またジョブ型であれば、性別に関係なく職務内容で報酬が決定されるため、「同じ役割や職務内容であれば賃金に男女差はない」という主張は理にかなっているようにも思えます。

 しかし、経済協力開発機構(OECD)のデータによれば日本のフルタイム労働者の賃金格差は21年時点で22.1%(*1)。厚生労働省の賃金構造基本統計調査でも、多くの業界で、同じ役職の男女の平均賃金に差があります(「13業界の平均賃金を公開 女性の賃金は男性の8割未満」参照)。「わが社に賃金格差はない」は本当なのでしょうか。