人材を資産と見なす「人的資本」の考え方に基づき、政府は「男女の賃金格差」の開示を企業に求めています。しかし、日経WOMANが2022年1~2月に行った調査によれば、賃金格差の解消に取り組んでいる企業は、回答した535社のうち159社(29.7%)にとどまりました。すでに対策を打っている企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。「男女の賃金格差がないわけない」。今回は、こんな思いを持って格差是正に取り組み、ある原因にたどり着いた2つの企業に取材。各社が取った対策についても聞きました。
東洋インキSCホールディングスの斉藤幸子さん。2020年8月から22年4月まで、第2子の出産に合わせて、産休・育休を取得しました。期間中に利用したのが、オンライン講座「グロービス 学び放題」です。
東洋インキSCホールディングスが21年から8週間以上の育休取得者を対象に、会社負担で提供しています。「クリティカル・シンキング」などをテーマにした講座で、すべて自宅からオンラインで受講できます。
育休中の社員のスキルアップに役立つこの取り組み。実は、男女の賃金格差是正にも寄与することが期待されています。
同社が社内の賃金格差を把握したのは6月。政府が労働者301人以上の事業主に対して、男女の賃金格差の公表を将来的に義務付ける方針を示したのを受け、調査に乗り出しました。分析の結果、同年齢・同勤続年数・同学歴の男女の基本給の賃金格差は約6%存在することを把握しました。
「賃金格差の調査以外にも、入社年次と職位の関係などの調査も行っています。07年入社の社員を対象にした社内調査では、30代前半から後半にかけて、入社年次が同じでも、男女間に職位の差が生まれることが分かっていました。男女間の賃金格差の主因は、女性の昇進の遅れと、それに伴う昇給の遅れと推測しています」(グループ人事部、松浦正一郎さん)
女性の昇進の遅れが男女の賃金格差につながっているという点は、厚生労働省の資料でも指摘されていますが、さらに同社は「なぜ、女性の昇進が男性に比べて、遅れているのか」という原因についても詳しく調査しました。