従業員数301人以上の企業に男女間賃金格差の公表が義務づけられた日本。この分野の取り組みで先行するのが、北欧アイスランドです。従業員25人以上の企業や機関は、同一労働同一賃金の認証を受けることが義務づけられています。厳しいルールを課せられた企業側はどう受け止めたのでしょうか。ノルウェー在住のジャーナリスト・鐙麻樹さんが、企業事例としてアイスランド航空の最高人事責任者を取材しました。法改正への対応を具体的に振り返ってもらいます。

国民の声が「義務化」を支持した

 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数ランキングで、13年連続で1位を獲得しているアイスランド。企業に同一労働同一賃金の提供について認証を受けることを義務づけた「同一賃金証明法」は、2018年から従業員数250人以上の大企業に適用され、企業規模に応じて段階的に、従業員数25人以上の中小企業にまで拡大されてきた。

 同法が生まれた背景には、繰り返されてきたフェミニズム運動がある。1975年、男女格差に抗議して、女性人口の約90%が仕事や家事を放棄してストライキを起こした。「女性の休日」(英語でThe Women’s Day Off)とも呼ばれる運動は1985年、2005年、10年、16年にも続いた。

1975年、アイスランドの女性たちが起こした大規模ストライキの様子。出典/Women’s history archives
1975年、アイスランドの女性たちが起こした大規模ストライキの様子。出典/Women’s history archives

 賃金格差の解消に向けてのさらなる前進となったのは、16年の国政選挙だ。パナマ文書(パナマの法律事務所から流出した文書により、世界の政治家や著名人による租税回避行為が明らかになった事件)による前首相の辞任の影響で、市民は既存政党への信頼を失い、政治の透明性の問題が浮き彫りになる。この時に連立政権の候補となった「改革党」は、賃金平等の取り組みを企業に義務化することを提示したのだ。

 賃金平等のための対策は実は08年から存在していたが、企業が「任意で」行うものだった。労働組合や経営者団体は、この「任意で」行う形の継続を検討していたが、市民からの「義務化」を支持する声は圧倒的で、ジェンダー平等の観点からも反対しにくいものだった。

 そして、17年に発足した新政権の下、国会で同一賃金証明の義務化が可決され、18年に施行された。

 同一賃金証明法の実現は、女性の継続的なストライキ運動、選挙での投票先を変えるという市民の行動、「任意ではだめだ、義務化しなければ」という意識が国会に届いた結果だったというわけだ。