広告会社では、こんな経験もしました。
飲み会で「女性は無理にお酒を飲まなくていい」という暗黙の了解があって、何度もそれに助けられたんです。一方で、男性たちは「男だから飲まなくてはいけない」という決まり事に苦しんでいたかもしれません。一気飲みをしなくてはいけない場面もありましたし、上司からお酒をつがれたら飲み干すというルールがまだ存在していた時代でした。
子育ての場面で気を付けたいこと
本では、「子育ての正解」についても考えさせられました。
泣きたいほどの感情に寄り添うことよりも大切にしたいものってなんですか?
「男の子らしくなってきて~」
男らしいって何? 個性によっても変わる。親はまずその偏見なくそう。
こんな言葉を息子に言ってしまったら、知らず知らずのうちに、私の偏見を息子に押しつけてしまうことになる。でも、気を付けていてもつい「男の子だから、泣かないの」とか言ってしまいそうで怖いです。あとは、親が気を付けていても、周りの環境が、子どもにジェンダーに関するステレオタイプを押しつけてしまうこともあると思います。
例えば、私が保活中に見学した保育園には、バレンタインデーに女の子の園児がクッキーを作って男の子にあげるという行事がありました。性別に関係なく、作りたい子が作るならいいのですが、女の子だけがお菓子を作って、男の子はもらうだけ。「性別役割分業」的な考え方が、保育園の時点で刷り込まれちゃうんですよね。でも、そんなことを「問題だと思います」と指摘したら、たぶん、「保育園の方針に口を出す面倒な親」って感じになっちゃうと思うし。「私のジェンダー観は時代の先頭! 男女差はなくすべき!」と物申すのは、ネット上では称賛されるかもしれないけれど、現実問題、なかなか難しいと思います。
「男は仕事、女は家庭」という固定観念を変えたい
この本が指摘している問題の一つに「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業があります。この古い固定観念は変えるべきだと思います。日本では女性の社会的地位がまだまだ低いです。それに、ジェンダー平等に理解があるふりをしつつ、自宅では当然のように妻に家事や育児を押しつけている男性もいるように思います。個人的には、日本の社会のそうした古い固定観念に対して「変わってほしい」と思いつつも、「いつか変われるのだろうか」という不安もあります。日本を良い方向に変えていくために、読みながら気を引き締め直す。そんな役割が、この本にはあるのではないかと思っています。
取材・文/小田舞子(日経xwoman) イメージ写真/鈴木愛子