2021年6月発売の『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる400を超える「駄言」を、エピソードとともに掲載している本書から、駄言の実例とその駄言を生んでいる背景の分析を公開。第15回では「子育て」に関する駄言「その2」を紹介します。
「そんなに働いて子どもがかわいそう」
専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移を見ると、今、働き盛りの30~40代を育てた親世代には、「企業戦士」の父親と、夫を支えた専業主婦の母親というカップルが多いことが推察できます。そのため、自分の娘、あるいは息子の結婚相手が、結婚・出産後も働き続けることの意義を、理解してくれない場合もあるかもしれません。
国税庁「民間給与実態統計調査結果」で、1981年(昭和56年)生まれの人が12歳になる1993年(平成5年)までの12年間で、平均給与は1.4倍になっています。これが2007年(平成19年)生まれの人が12歳になる2019年(令和元年)までの同期間では1.06倍にしかなっていません。夫婦ともに共働きを求める声が増えている背景には、「夫一人の収入だけでは不安がある」という、こうした実態もありますが、そのあたりの切実さは当事者でなければ実感が湧きにくいのかもしれません。
夫婦共働きに対する世代ギャップが生まれているのは、家の中だけにとどまりません。見るからに「仕事帰り」のスーツ姿のママが夜に街で小さい子どもを抱いていると、「そんなに働いて子どもがかわいそう」などと、見知らぬシニア層から声を掛けられることもあるようです。
その背景には「母親が働くことは、子どもに悪影響を及ぼす」「子どもが小さいうちは長時間、母親と過ごすべきだ」といった決め付けがある場合も。母親は家事・育児に集中すべきだという古い考え方が、まだ社会のここかしこに残っているのです。

【書籍情報】
ジェンダーにまつわる
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による
1200もの「駄言」が教えてくれたものとは?
早く絶版になってほしい
『#駄言辞典』
編集:日経xwoman
発行:日経BP
定価:1540円(10%税込)
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【目次】
・駄言とは?
・まえがき
・第1章…実際にあった「駄言」リスト
女性らしさ/キャリア・仕事能力
生活能力・家事/子育て
恋愛・結婚/男性らしさ
・第2章…なぜ「駄言」が生まれるか
スプツニ子!/出口治明/及川美紀
杉山文野/野田聖子/青野慶久
・第3章…「駄言」にどう立ち向かえばいいのか
・あとがき