2021年6月発売の『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる400を超える「駄言」を、エピソードとともに掲載している本書から、駄言の実例とその駄言を生んでいる背景の分析を公開。第16回では「子育て」に関する駄言「その3」を紹介します。
「母親なら手抜きするな」
2020年7月、「子連れのお母さんがスーパーで総菜のポテトサラダを手に取っていたところ、たまたま通りかかった男性客から『母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ』と言われているのを見た」というツイートが話題になりました。ここでもいくつかの価値観の押しつけを見て取ることができます。「料理は母親の役目だ」「子どもが口に入れるものは母親が手作りすべきだ」……という社会的プレッシャーが、母親一人の肩にかかる場面が多いのです。
現実を見れば、今は味も栄養バランスも良い総菜が簡単に手に入る時代。「市販のお総菜もうまく取り入れて、その分、家族でゆっくり食事を楽しみましょう」と呼びかけるぐらいがちょうどいいのかもしれません。
今回集まった駄言の中で多かったものの一つに、「母乳?」という言葉もありました。「母親は子どもを母乳で育てるべきだ」という「母乳神話」に基づき、「もちろん母乳で育てているよね」と聞かれることがあるのだそうです。親戚だけでなく、街中で初対面の人から聞かれることも少なくないとか。
今はお湯で溶かす必要のない、液体ミルクという便利な商品も発売されている時代です。母乳であれミルクであれ、何より大事なのは、たっぷりの愛情を注ぐことです。
また「(子どもを)保育園に行かせるの、かわいそう」という駄言も複数ありました。共働き世帯の増加に伴い、保育園や幼稚園に預けたり、延長保育を利用したりする世帯は増えます。子どもは親だけではなく、さまざまな人たちが関わって育てていくものです。

【書籍情報】
ジェンダーにまつわる
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による
1200もの「駄言」が教えてくれたものとは?
早く絶版になってほしい
『#駄言辞典』
編集:日経xwoman
発行:日経BP
定価:1540円(10%税込)
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【目次】
・駄言とは?
・まえがき
・第1章…実際にあった「駄言」リスト
女性らしさ/キャリア・仕事能力
生活能力・家事/子育て
恋愛・結婚/男性らしさ
・第2章…なぜ「駄言」が生まれるか
スプツニ子!/出口治明/及川美紀
杉山文野/野田聖子/青野慶久
・第3章…「駄言」にどう立ち向かえばいいのか
・あとがき