問題の性質や背景を認識することが出発点

中村さん こうした歴史は、女性に関する問題を取り上げている新聞記事などでも普通に書かれていることです。毎日、新聞などを読んでいれば分かるはずなのです。特に今、夫婦別姓について論じられていますが、その問題も明治民法から始まっているのですから、歴史上の事実は認識しておく必要があります。

 女性の問題を考えようと言うならば、「そういう問題がどこから来ているのか」「その背景は何なのか」をきちんと知っておく必要があります。さもなければ、ただ文句を言うだけで終わってしまう。ですから、現状の問題を解消するために、問題の性質や背景を認識しておくことが、まず出発点です。

女性を取り巻く問題を考えようというならば「問題がどこから来ているのか」「背景は何なのか」をきちんと知っておく必要がある(写真はイメージです)
女性を取り巻く問題を考えようというならば「問題がどこから来ているのか」「背景は何なのか」をきちんと知っておく必要がある(写真はイメージです)

中村さん さて、家制度は戦後になくなったはずなのに、まだ続いていると思い込んでいた人が少なからずいるということに、理由がないわけではありません。

 戦後、日本国憲法が生まれて、男女平等がうたわれるようになりました。民法もそれに沿って変えられました。「戦後、男女が平等になった」ということは、「それまでは男女は平等ではなかったはずだ」と皆、思うはずです。「では、なぜ戦前は男女不平等だったのか。家制度があったからだ。戦後は家制度が廃止されたから、男女平等になったのだ」ーー。こうした考え方が一般に流布されました。

 「『家制度』が廃止されたのに、まだ『家制度』の影響は残っている。だから男女不平等な状態が続いている」という考え方が、長らく一般的でした。こうして「家制度」は攻撃の対象となり、男女不平等は「家制度」の影響だと言われてきた。故に「今でも『家制度』がある」と思い込んでしまっている人がいるのは、ある意味、仕方がないことなのかもしれません。

 このように戦前と戦後で変わったことをどう捉えるか、「家制度」がどういうものなのかを検討することが、私が新書(『女性差別はどう作られてきたか』)でやろうとしたことです。

 現状をしっかり理解しなければ、今の問題を正確に把握できず、改善策も見えてこない。だからまず問題を整理しようと思って、本を書いたわけです。

 日本の場合、いろいろな事情が大変込み入っているので、さまざまな問題を一つひとつ切り離して考えていく必要があります。

※ 次回の中編では、中村さんに「日本における女性差別の歴史の流れ」について説明してもらいます。

取材・文/小田舞子(日経xwoman) 写真/PIXTA