2021年6月発売の『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる400を超える「駄言」を、エピソードとともに掲載している本書から、駄言の実例とその駄言を生んでいる背景の分析を公開。第23回では「恋愛・結婚」に関する駄言「その3」を紹介します。

「実家に帰るなら孫を連れてこい」

 『#駄言辞典』では、今を生きる私たちがリアルに抱く感覚と、社会が押しつけてくる価値観の間に生じているズレを指摘しました。そして特に、古い価値観を持って生きている人と、新しいリアリティを鋭敏に感じて生きる人の間で「駄言」が生まれやすいと考察しました。

 例えば今回、駄言として投稿されたものの一つに「実家に帰るなら孫を連れてこい」という言葉がありました。この言葉の背景には、実家側が娘に対して抱く「早く結婚して、孫の顔を見せてほしい」という思いがあります。もしかすると娘への愛情もあるのかもしれません。しかし、娘のほうは、この言葉を「駄言」と捉え、「私の人生は私のもの。結婚するもしないも、子どもを産む、産まないも、私の自由」と感じているのです。

 こんなふうに、以下に紹介する駄言の背景には、さまざまな価値観のギャップが横たわっています。「これはどういう事例だろう」と考えながら読んでみてください。

仕事に楽しくまい進しているとき、実家から言われた一言で気分が沈む……。そんな経験はありませんか?
仕事に楽しくまい進しているとき、実家から言われた一言で気分が沈む……。そんな経験はありませんか?
【「恋愛・結婚」に関する駄言~その3~】
書籍『#駄言辞典』にも掲載されている、公募で集まった「駄言」の一部を紹介します。以下、太字部分が駄言です。応募時に寄せられたコメントや投稿先も併せて掲載します。


「もうそろそろ結婚して(仕事)辞めないとね~」
男性上司に言われた。(ツイッターより)

「いつまでも結婚しないから世間体が悪いでしょ。あんた、うちの一族に恥をかかせるの?」
と、言われましても。(・∀・)(ツイッターより)

「なかなか片づかなくて困っちゃう」
結婚しない私について両親が親戚に。既に経済的に自立してたのに、今さら片づくって何だよっていうのと、結婚しないことで同居でもない親が何に困るというのか。(ツイッターより)

「あと結婚してないのあんただけだよ」
「実家に帰るなら孫を連れてこい」
(ツイッターより)

「妹さん結婚したんだ! お姉さんも負けないように早く結婚しないとね!」
結婚の早さに勝ち負けあるんですかね。(ツイッターより)

「いつ結婚するの? あんたの年にはあたしはあんたを産んでたわよ」
(ツイッターより)

「そんなのいちいち考えてたら結婚できないし、子どもなんて産めないよ!」
(ツイッターより)

A「〇〇さんって美人なのにどうして独身なんだろうね」
B「中身によほどの欠陥があるんじゃない笑?」
「独身=性格に難アリ、余り物」みたいな古すぎる価値観消えてくれ。恋愛や結婚に興味ない人もいるし、既婚か未婚かに関係なくクズな人はクズです。(ツイッターより)

「子ども部屋おばさん」
「子ども部屋おじさん」もある。事情があって人生そのようなのに。男性はバカにされ、女性は透明化される。(ツイッターより)

「あら、1人で旅行なんて寂しいわね」
(ツイッターより)

*「駄言」の紹介は、まだ続きます。


【書籍情報】
ジェンダーにまつわる
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による
1200もの「駄言」が教えてくれたものとは?


早く絶版になってほしい
『#駄言辞典』

編集:日経xwoman
発行:日経BP
定価:1540円(10%税込)
 Amazonで購入する

【目次】
・駄言とは?
・まえがき
・第1章…実際にあった「駄言」リスト
 女性らしさ/キャリア・仕事能力
 生活能力・家事/子育て
 恋愛・結婚/男性らしさ
・第2章…なぜ「駄言」が生まれるか
 スプツニ子!/出口治明/及川美紀
 杉山文野/野田聖子/青野慶久
・第3章…「駄言」にどう立ち向かえばいいのか
・あとがき