日本はジェンダーにおいても、世界に何周も遅れている

 まだ『#駄言辞典』を読んでいない人には、この本を読んで、ジェンダーにおいて、日本が世界に何周も遅れていることに気づいてほしいです。

「リケジョ」
そんなカテゴライズされないで男子も女子も好きな勉強ができますように。

「女子なのに理系?」
「女子は数学が苦手」
『#駄言辞典』42~43ページ

 これらの駄言を読んでみてください。僕に言わせれば「何を言っているんですか?」という感じです。理科系の優秀な女性はたくさんいます。東京大学(カブリ数物連携宇宙研究機構)にも女性の教授がいて、『美しい数学入門』(伊藤由佳理著、岩波新書)という大変良い本を書いています。研究が超一流だけでなく優れた啓発書まで書ける逸材ですね。

あらゆる分野において、勉強が足りていない

 『#駄言辞典』の第2章のインタビュー編で、出口治明先生が良いことを言っています。「駄言が生まれる理由は『不勉強』」だ、と。この不勉強というのは、ジェンダーの問題だけではなく、学問や産業、技術、社会など、すべてに対して言えることです。例えば、科学の進歩でいえば、新型コロナウイルスの出現によって、医学は大きな変化を遂げました。そうした変化について詳しく勉強している人がどれだけいるでしょうか。経済に関しても同様です。勉強が足りないがゆえに、GAFAのような新しい発想を生み出せないのです。

 一般的な傾向として、20~30代の若手のほうが50~60代の人たちよりも勉強していますよね。僕も含めて50~60代以上の人たちが、若手に負けないぐらい真剣に勉強しないと、次の提言なんてできません。権力だけ持っていて、勉強していない人がダメなんです。

 出口先生は数々の書籍も書いている「知の巨人」です。彼のすごいところは、社長経験者だとか、学長だとかではなく、今でも勉強し続けているところです。僕は書評サイト「HONZ」でレビュアーをしているご縁で、出口先生とときどき会って話をしますが、話がものすごく面白い。もともと人間的な魅力があるだけでなく、常に勉強し続けていることで、その魅力が増しているんですね。

 僕は京都大学の特任教授として、今でも毎日大学に行って勉強しています。院生たちと話をすると、「負けていられない」と思いますよ。今65歳で、あと5年間は大学にいますが、70歳になってもたぶん勉強を続けているでしょう。だって勉強は一生にわたり楽しいものなんですから。

「不勉強というのは、ジェンダーの問題だけではなく、学問や産業、技術、社会など、すべてのことに対して言えることです」(鎌田さん)
「不勉強というのは、ジェンダーの問題だけではなく、学問や産業、技術、社会など、すべてのことに対して言えることです」(鎌田さん)

 さて、アカデミアの分野におけるジェンダーギャップを解消するためには、「ガラスの天井」を破り、優秀な女性をどしどし重要なポストに就けていくべきです。事実としてそうした数字を積み上げていく必要がありますし、男性もその動きをサポートしていかなければいけません。

 一番な優秀な人を性別に関係なくトップに据える。シンプルですが、それだけのことなんです。そうでなければ地球科学的にも、これから「想定外」のことがバンバン起きる困難な時代を乗り越えることはできません。

 京都大学の男女比率の推移を見ると徐々に女性の比率が上がってきています。本来であれば男女比5:5になっていいと思います。全国の女性の高校生の皆さん、高い目標を掲げるのに遠慮する必要など全くありません。自分の夢ややるべきことに向き合い、それをかなえるための進路を迷うことなく突き進むのみです。京大や東大もどんどん目指してください。そして、社会を変えてください!

世の中が大変になっている今こそ、変化するチャンス

 世の中が大変になると、それだけ旧来の社会的構造や観念が揺さぶられて「今のままではいけない」という機運が増します。そういう意味では、これからもっと若手や女性が社会に出やすくなってきます。だから僕は未来に大きな希望を持っています。

 僕は今、京大の特任教授・名誉教授ですが、いつまでもこの座に安住するつもりはありません。僕らの世代を若い人たちが乗り越えていかなかったら、学問がダメになり、社会が良くなっていかない。僕ら世代は今や「ブースター」にすぎないんです。ブースターはロケットを打ち上げるときに必要な固体燃料ロケットで、ロケット本体が打ち上がったら必要なくなります。あとは若い人たちが月にでも土星にでも行ってくれればいい。もちろん、その人たちの性別は全く関係ありません。

取材・文/小田舞子(日経xwoman) 鎌田さん写真/行友重治 イメージ写真/PIXTA