2021年6月発売の『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる400を超える「駄言」を、エピソードとともに掲載している本書から、駄言の実例とその駄言を生んでいる背景の分析を公開。第26回では「男らしさ」に関する駄言を紹介します。

「えっ男なのに育休取るの?」

2022年4月から、企業は子を持った男性社員に個別に育児休業の取得を促すように義務付けられるが、職場のリアルは急には変わらない
2022年4月から、企業は子を持った男性社員に個別に育児休業の取得を促すように義務付けられるが、職場のリアルは急には変わらない

 この連載では主に女性が言われることの多い駄言を取り上げてきました。しかし、ジェンダーバイアスに苦しんでいるのは、女性だけではありません。実際、『#駄言辞典』を作るにあたり駄言を公募したところ、男性からの投稿も数多くありました。

 中でも目立ったのが男性から寄せられた「家事・育児」に関する駄言。いまや家事や育児に女性と同様に関わる男性や、数は少なくても、女性より積極的に関わる男性も確実に増えています。しかし、そうした男性たちの姿勢を、職場など、周りの人たちが理解しないというケースが少なくありません。

 男性の育児休業(育休)に関する駄言も複数集まりました。

 政府は少子化対策の一環として、男性の育休取得に力を入れており、1996年に0.12%だった男性の育休取得率は、2019年度には7.48%、2020年度には12.65%にまで上昇しています(女性は同49.1%、83%、81.6%)。2020年5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」では、男性の育休取得率を2025年までに30%にするという目標が掲げられました。2022年4月から、企業は子を持った男性社員に個別に育児休業の取得を促すように義務付けられます。

 にもかかわらず、社内(特に現場の上長)からは「なぜ父親が育児休業を取らなければいけないのだ?」という疑問を呈されてしまう……。同じ時代を生きているのに、個人の考え方や職場の風土によって、周りからの反応に大きな違いが生まれるトピックです。

「(男が)育休取って何するの?」
(ツイッターより)

「男が育休取っても、昼間は暇でしょ? 何してるの?」
黙れ。(ツイッターより)

「育休明けに居場所なくなってないといいね」
長めの育休を取る前日に言われた一言。いまだに強烈に覚えている。言った人のことは一生忘れない(怒)。(東京都・ジャイアンと馬場・20代・男性)

「男性の育休取得実績をつくりたいので一日だけ育休取ってください」
人事部から言われた。(ツイッターより)

「男のくせに妻が出産するからといって会社に来ないとは何事だ!」
妻の出産前に、電話口で叫ばれました。(ツイッターより)

「イクメン」
普通に父親でいいのに。(ツイッターより)

*「駄言」の紹介は、まだ続きます。

ママにしかできない育児はない。「育児はママの役割」という固定観念はもう要らない(画像はイメージです)
ママにしかできない育児はない。「育児はママの役割」という固定観念はもう要らない(画像はイメージです)

【書籍情報】
ジェンダーにまつわる
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による
1200もの「駄言」が教えてくれたものとは?


早く絶版になってほしい
『#駄言辞典』

編集:日経xwoman
発行:日経BP
定価:1540円(10%税込)
 Amazonで購入する

【目次】
・駄言とは?
・まえがき
・第1章…実際にあった「駄言」リスト
 女性らしさ/キャリア・仕事能力
 生活能力・家事/子育て
 恋愛・結婚/男性らしさ
・第2章…なぜ「駄言」が生まれるか
 スプツニ子!/出口治明/及川美紀
 杉山文野/野田聖子/青野慶久
・第3章…「駄言」にどう立ち向かえばいいのか
・あとがき