思ってもいないことを口にして、人を傷つけたことも

―― どんな中学校生活を送ったのですか?

ryuchell 小学生の間は、友達から何か言われても自分が傷ついて終わりだったし、「自分の素がばれなければそれでいい」と思っていたんです。でも、中学校に上がったら「自分を守るためには、誰かを傷つける側に回らないといけない」と思うような環境になってしまった。何より孤独が怖くて、「生き残るには自分を完全に隠さないといけない」と思い込んでいました。例えば僕が大好きな友達や先生は、そのとき仲良くしていた友達からはダサく見えたみたいで。その友達に便乗して、本当は好きだった友達や先生に文句を言ったこともあります。思ってもいないことを口にして人を傷つけることもありました。

 そのうちに、自分が素を出していないから、本当の自分が自分でも分からなくなってしまったんです。好きな歌があったのに、好きでもない、はやりの歌ばかり覚えて。好きな香水もあったのに、周りが「かっこいい」と思っている「大嫌いな香水」を付けて。声も低くしたし、カラオケに行っても、マイクの持ち方からして本来の自分なら絶対しないような持ち方をしていました。

 あのとき本当の自分が好きだったもの。それは、メイク、バービー、ディズニー、洋画……。僕は沖縄の中部出身で(米軍)基地がある地域だったので、イケてる子たちは、米国人のようなイメージを目指していました。海外志向が強い友達が多かったので「海外が好き」というのはからかわれなかったのですが、僕はその中でも、いわゆる女の子っぽいものが好きだったので。本音を周りに言ったらからかわれてしまうと自分で決め付けていました。目立ちたくないけれど、からかわれたくないから悪く目立とうって。

 とにかく「今」を生きるのに必死で、夢も持てなくなりました。「誰も自分の本当の気持ちを分かってくれない」と思って。つるむ友達はいっぱいできたけど、本当の友達は全然できなくて。周りが「僕のことが好き」と言ってくれても「僕のどこが好きなんだろう」って感じでした。つまらなかったし、全然楽しくなかった。

 今振り返れば、スーパーボールみたいに、ボールってパンッと下に力強く投げつけないと上に上がらない。だからあのとき、下まで行ってよかったなと思うんです。今、あのときに聴いていた歌を聴くと、「あのときはあのときで頑張っていたな」って、ようやく当時の自分を肯定できるようにもなりました。

 傷つく言葉を投げつけてくる人に会うと、「なんでこんなこと言うんだろう」って思います。でも、そういう人って心のどこかに「自分は報われていない」「幸せじゃない」「何か誰かに正論ぶったことを言って発散しなくてはやっていられない」という気持ちがあるはずなんです。少なくとも中学校時代の僕はそうでした。

10月に出版した『こんな世の中で生きていくしかないなら』(朝日新聞出版)
10月に出版した『こんな世の中で生きていくしかないなら』(朝日新聞出版)