『こんな世の中で生きていくしかないなら』(朝日新聞出版)を10月に出版したryuchell(りゅうちぇる)さん(*)。新著の中では「諦める、割り切る、逃げる、戦わない、期待しない」という5つの武器を身に付けながら生きてきた歩みを、赤裸々に語っています。『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)を読んだryuchellさん。(下)では、自身が駄言を言われたらどう対処するのかのアクションなどを詳しく聞きました。
*10月1日から芸名をryuchellに変更

【ryuchellさんインタビュー】
(上)りゅうちぇる 男の子がバービーで遊んだっていいよね
(下)りゅうちぇる 駄言を言われたら、相手の背景を想像する ←今回はココ

「どうしても言われたくない言葉」を3つ決めていた

日経xwoman編集部(以後、――) 『早く絶版になってほしい #駄言辞典』を作るに当たり、ウェブ経由で駄言やそれを言われたときのエピソードを応募してもらいました。それを読むと「傷つく言葉(駄言)を言われたとき、最初はショックすぎて聞き流してしまった。後になって『やっぱりあの言葉、許せない』ということに気づいたけれども、そのときはもう相手は目の前におらず、言い返す機会も訪れず、あれからずっと悔しさや悲しさを胸の中にしまっていた」という話がたくさんありました。

ryuchellさん(以後、ryuchell) 僕が高校のときに実践していた方法があるので紹介しますね。まず、自分の中で「どうしても言われたくない言葉」「これだけは許せないという言葉」を3つ決めるんです。もしそれを誰かに言われたら、僕は沖縄方言でぶち切れることにしていました。この3つの具体的な内容は、秘密ですよ(笑)。でもこうしてあらかじめ、言われたくない言葉を3つ決めて覚えておけば、言われたときに確実に気づける。そして「今、傷ついた」って相手に言えるんです。ちょっと傷ついたときがあっても「この3つの言葉じゃないから、今回はいいや」って我慢もできる。こういう「許せない言葉」を前もって決めておくことは、自分を守ることにつながると思います。

傷つく言葉を言われたら、言った相手の背景を想像する

ryuchell 今は芸能人として人前に出させていただいている以上、「SNSでもテレビでも人を傷つけない」と決めています。中学校時代の経験が良い糧になっているんです。この間、SNSで「ブス、死ね」ってコメントをもらったときは「僕はかわいいし、生きます。あなたも生きてください」という返事が素直にできました。

 中学生のとき、僕は個性的に生きている人が大嫌いでした。そのことこそが、当時の僕ができないことだったから。だから、個性的に生きていた人たちに対して攻撃的な言葉をぶつけてしまった。だからこそ、今になって、誰かに傷つく言葉を言われたときに、その相手の声とか表情とか言葉を心や頭に引きずらずに、相手の背景を考えることができます。

 「この人はどうして僕にこの言葉を言ったんだろう」「どうしてこの人はこういう言葉遣いになるんだろう」「この人は家から出るときに誰かに『行ってらっしゃい』と言ってもらえたかな」「この人は満員電車に揺られて、すごいストレスを受けたのかな」「一人寂しくごはんを食べているのかな」……って、その言葉が出るまでの背景をいっぱい考えてみる。「嫌いな人のことを考えるなんて嫌じゃないの?」と思われるかもしれないけれど、それが自分を守ることにつながるし、自分を愛してあげるきっかけにもなると思うんです。

 実はこれができるようになったのは子どもができてから。子どもがイヤイヤ期のときに「どうしてこの子はこういう状態に至っているのだろう」と考えるようになったんです。それを、ファンでいてくれる人や、僕を芸能人の「ryuchell」として見てくれている人に対して実践しています。応援してくれていて、僕のSNSにSOSを求めている人には寄り添いたいんです。僕のSNSに傷つくような言葉を送ってくるのは、その人からのSOSだと思っています。

「SNSに傷つくような言葉を送ってくるのは、その人からのSOSだと思うんです」と語るryuchellさん
「SNSに傷つくような言葉を送ってくるのは、その人からのSOSだと思うんです」と語るryuchellさん