日本のジェンダーギャップ指数が低い要因の1つが、政治分野におけるジェンダーギャップです。政党の要職を年配の男性が占め続けている中で、野党第1党の立憲民主党では、党の意思決定機関である執行役員会のメンバーが男女半々になりました。その実現に向けて働きかけてきた同党ジェンダー平等推進本部長で参議院議員の徳永エリさんに、実現に至るまでの経緯と、政治分野のジェンダーギャップを解消するために残っている課題について聞きました。
編集部(以下、略) 立憲民主党では2021年11月に泉健太さんが新代表となり、執行役員12人のうち半数の6人が女性になりました。主要政党では今までにない例です。実現までの経緯を教えてください。
徳永エリさん(以下、徳永) 21年10月の衆議院議員選挙のとき、私は唯一女性の選対副委員長でした。女性候補者を増やすためにクオータ制(編集部注・候補者もしくは議席の一定割合を女性または男女に割り当てる制度)を導入したかったのですが、男性議員の抵抗があってダメでした。くやしい思いをしたので、党の代表が替わることになったときに、代表候補だった泉さんに「執行役員の3割を女性にしてほしい」と言ったら、彼はそれを上回る「女性を5割にする」という目標を出してくれました。「本当にやってくれる? できる?」と聞いたら、「やるんだ」と。
私は彼の応援に回り、実際に代表になった泉さんは執行役員の半数を女性にしました。実は、私自身は参議院の環境委員長に就いており、その立場上、公正中立が求められるという党の判断で執行役員会には入りませんでしたが、ジェンダー平等推進本部からは本部長代行になった衆議院議員の岡本あき子さんが執行役員になっています。
徳永 現在、執行役員会は12人のうち半分が女性で、私も入っている常任幹事会は28人中12人が女性です。前体制のときには「言ってもしかたがない、党は変わらない」と思っていた女性たちが我慢するのをやめて、活発に発言しだしました。女性の活躍を党として後押ししてくれるという安心感があり、風通しが良くなり始めています。これまでの常識にとらわれない、深い議論ができるようになりました。
クオータ制の導入を実現したいというメンバーが党の最高意思決定機関に入り、女性がメンバーの半分を占めて議決権を持っている。これは大きな進歩だと思います。次回の衆議院議員選挙のときには、いよいよ立憲民主党でクオータ制を導入したい。その可能性は相当高くなってきたと思います。
党本部は変わった。次の課題は地方にある
―― 国政の場に女性が増えていくために、次に変えていかなくてはいけないのはどこでしょうか?
徳永 党本部はかなり変わりました。ジェンダー平等推進に取り組む男性の重鎮議員も出てきていて、男性と女性が一緒になって改革を進めようとしている。ところが、地方ではこれができていません。全国47都道府県ごとにある都道府県連や総支部では主要ポストが年配の男性に占められていて、「ジェンダーのことは女性にやらせておけばいいだろう」と思っている人が多い。例えば、3月8日の国際女性デーの街頭演説では、本部では泉代表や(ジェンダー平等推進本部)事務局長の桜井周さんなど男性が参加していましたが、私の地元である北海道では男性は1人も来ませんでした。
実は、地方の県連や総支部が変わらないと、国会議員に女性を増やすことはできないんです。