世界経済フォーラム(WEF)による「ジェンダーギャップ指数2022」で、日本は146カ国中116位。低迷する順位の向上には何が必要でしょうか。国連機関で長いキャリアを持ち、現在は国連人口基金(UNFPA)駐日事務所所長を務める佐藤摩利子さんに聞きました。

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鍵を握るのは「意思決定の場に女性がいるか」

 日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中、116位でした。一見すると、順位が上がったようにも見えますが、昨年のランキングで日本より高順位だった6カ国が調査対象から外れているため、実質の順位は下がっているともいえるのではないでしょうか(前回は156カ国中、120位)。スコアだけに注目すると総合0.65で、昨年の0.656より悪化しています。「経済」分野におけるスコアが昨年の0.604から0.564に下がっている点を考慮すると、全体としては前回を下回る結果となっていると感じます。国連の中でも、日本はジェンダー後進国と認識されています

 UNFPAとして最も注目したいのは「医療へのアクセス」分野ですが、すべての分野でジェンダーギャップを解消する上で鍵を握るのは、「意思決定の場に女性がいるか否か」に尽きるでしょう。結局、国を形づくっているのは法律や政策であり、民主主義が機能している場合、最高の意思決定の場が国会であるとするならば、その場に女性がどれだけ関わっているかが重要です。

 例えば、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)のテーマの一つである出産や不妊治療に関する法律についても、男性の政治家が主体となって決めているというのが実際のところです。「30%の法則」という原則があり、マイノリティは少なくとも全体の3割を超えなければ声を上げにくいといわれていますから、その場にたとえ女性が数人いたとしても数が3割に満たなければなかなか本音を発言しづらいのです。「Nothing About Us Without Us(我々のことを、我々抜きで勝手に決めるな)」という表現の通り、物事を決める際には、メンバーの中に当事者を一定数以上入れる必要があるのです。

 しかし一方で、日本における女性の政治参加率を上げていくには多くの課題があります。私の知り合いでこれまで参院議員を務めていたにもかかわらず、先日行われた選挙に出馬しなかった女性がいます。不出馬の理由を聞くと、いくつかの理由の一つに、育児と議員活動の両立が困難であることを挙げていました。女性の政治参加率を上げるには、どんな人でも働きやすい環境を、政治の世界でも整えることがまず必要ですが、女性の母数が少ないがために、その議論さえもなかなか進まないという悪循環に陥っているのが日本の状況でしょう。

 また、私が注目する数値として、各国のリポートページにある「Reproductive autonomy(生殖の自己決定)」の項目があります。5段階評価で、日本は上から3つ目の「やや正当化できる望まない妊娠をした場合、女性の『性と生殖に関する健康・権利』を守る法律的枠組みがある」という評価が下されています。しかし、望まない妊娠をした場合に中絶できるという法律があっても、実際はパートナーの同意を得られずに中絶できない場合がありますし、堕胎罪もいまだに存在します。他の先進国と比べ、「からだの自己決定権」が必ずしも享受されていないという評価となっています。

 日本で私が特に危惧しているのは、性教育・命の健康教育の遅れです。学習指導要領の中には現在、「はどめ規定」と呼ばれる学習内容の制限があり 、性行為は取り扱わないことになっており、国連が提唱する「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」が示す国際基準から後れを取っています。最近になって性教育に関する書籍が書店の棚に並ぶようにはなりましたが、これだけではまだまだ足りません。人間が成長していく上で最も必要としている人権教育の一つですから、基本的な知識として、社会全体でもっと本気で取り組むべきです。からだの自己決定権がジェンダー平等の一丁目一番地であると思っています。