認知症になるのが怖くて、脳トレを一生けん命しているというあなた。そのやり方は本当に脳のためになっていますか?
 加齢による“もの忘れ”は「脳のキャパオーバー」が原因かもしれません。脳を使うだけでは老化が加速してしまう可能性もあります。脳の専門家である千葉大学脳神経外科学の岩立康男教授に、記憶のメカニズムと、脳を長持ちさせる方法について聞きました。

<健康な脳のつくり方(1)脳をバランスよく使う>
何も考えない時間をつくろう

 知っていたはずの漢字や人の名前がなかなか出てこなかったり、記憶力の低下を実感すると不安になるもの。千葉大学脳神経外科学の岩立康男教授は「歳を重ねると少しずつ脳の細胞は減っていくので、確かに情報を処理する能力や記憶できる総量は減る」という。

 ただし、もの忘れすべてが脳細胞の減少によるものではないという。「記憶というのはどんどん上書きされるものではなく、新たに入ってきた情報は新しい記憶として保存される。長く生きれば膨大な量の記憶が保存されるので記憶を保存する場所も少なくなるし、普段思い返すことのない古い情報は埋もれて取り出しにくくなる」。

 「だから、新しいことがなかなか覚えられなかったり、普段使わない記憶がすぐに引き出しにくかったりするのは記憶の量が増えてくると当たり前のこと」と岩立教授は説明する。大して使いもしない漢字の勉強や脳トレを一生けん命するのは、残り少ない脳のキャパを一生けん命埋めようとしてることになってしまう。

 「たしかに、普段やっていないのであれば勉強や脳トレは脳の活性化につながる。課題や目的に向かって集中して作業しているときに使われるのは前頭葉や頭頂葉の外側の外側皮質に当たる『集中系ネットワーク』と呼ばれる部分だ。ただ、いつも同じ勉強や脳トレをすると、ここばかりが使われてかえって疲弊してしまう」という。

「集中系」活動別リスト


  • 課題をこなす/深く考える
  • 読書する
  • 好きなことに熱中する
  • 運動する
  • 好きな音楽を聴く
  • ゲームする