体幹の筋肉が正しい順番で働かない、また動きにクセがあると、加齢とともに姿勢が悪化して、将来、寝たきりになるリスクが高まる……? 第1回では、体幹の筋肉の正しい使い方はシーンごとに異なること、そしてそのカギは「筋肉が働く順番」にあるという新事実をお伝えしました。今回は、その「順番」について詳しく、整形外科医で早稲田大学スポーツ科学学術院の金岡恒治教授に教えてもらいました。
痛まない、美姿勢の人は知っている「体幹の新事実」
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体幹の筋肉が正しい順番で働く「モーターコントロール」をマスター
「モーターコントロール」というワードを初めて聞いたという人も多いはず。モーターは運動、コントロールは調整や制御といった意味で、思い通りに動くために必要な、筋肉や神経などを協調させる能力のことをさす。
たとえば、身体を動かすとき、この筋肉がまず動いて、次にこの筋肉が…などと、働く筋肉やタイミングを意識することはない。しかし実際は、第1回(肩こり、腰痛の人が知らない「体幹」の正しい使い方)で示した図のように、動きの種類によって、体をしっかり支えるために働くべき筋肉とそのタイミングがある。
たとえば、日常生活の動きでモーターコントロールが正しく機能していると、骨盤底筋群もきちんと働くため、不意に動いた時の尿もれも起きにくくなる。
この“筋肉を適切なタイミングで働かせる機能”である「モーターコントロール」は、最近、リハビリやトレーニングの世界で重要視されている概念だ。体幹では、おおまかにいうと、深層にある筋肉(インナーマッスル)が、表層の筋肉(アウターマッスル)よりも先に働くのが正しい。
体幹のモーターコントロールに詳しい早稲田大学スポーツ科学学術院の金岡恒治教授によると、「モーターコントロールがうまくできていないと、ふいに動いた瞬間などに腰や首などを痛めるリスクが高い。ぎっくり腰はその代表。だから、体幹を意識しなくても“深層部の筋肉が自然に働く”カラダづくりが大事」。
まずお腹を引っ込めて、深層筋を使う意識を持ってみよう
モーターコントロールが機能するために欠かせないのが、体をブレにくくする“安定性”と、ひねったり曲げたりする“可動性”の2つの要素。まず“安定性”からみてみよう。
安定性を高める第一歩は、「お腹を引っ込めてから動くこと」。お腹を引っ込めるだけで、深層筋が働く。立つ、歩くときはもちろん、ちょっとした動きを起こす際も、まずお腹を軽く引っ込めて、腹横筋を使いながら動いてみよう。すると、背骨側の多裂筋も働きはじめ、腰椎全体で姿勢を支えられるので、負担が一点に集中しなくなる。
例えば重い荷物を持ち上げる際、腹横筋が働いていないと、腰椎の一部に動作や荷物の重みによる負担が集中する。これを長い年月繰り返すと、関節の障害や、脊柱管狭窄症の要因になる。まずはお腹を引っ込めることで腹横筋を働かせると、姿勢が安定し、腰椎全体で動作や荷物を支えられるようになる。
さらに、お腹を支える「腹横筋」と同時に、頭を正しい位置で支える「頸長筋(けいちょうきん)」、肩甲骨を寄せる「菱形筋(りょうけいきん)」に加えて、背骨側の多裂筋(たれつきん)、骨盤底筋群なども連動して使えるようになることで、体幹の安定性は高まる。なお、骨盤底筋群は、「お尻の穴や膣を締める」、「尿をガマンする」などの意識で働く。