大阪万博のパビリオンにがっかり
ところが、70年の大阪万博で黒川さんが設計したパビリオンを見たら、これが鉄のモンスターみたいな代物で、期待が大きかった分、激しく失望しました。その頃、世の中では公害が大きな社会問題になり、丹下さんや黒川さんら先達の建築家がやっていることって全然アウトじゃん、と、すっかりナナメ目線の建築学生が出来上がってしまいました。
では、何が自分にとって理想か? そう問い直したときに、梅棹さんのこの本を思い出したのです。アフリカは魅力的な大地ですが、当時はまだ情報も少なく、危険なことも多々あったはずです。そんな所に軽々と飛び込んでいく梅棹さんは、当時のお堅い学者像を突き破っていたし、21世紀の今だって、いないタイプですよね。僕にとって、梅棹さんが新たなアイドルになりました。
タイトルにある通り、本の内容はまさに記録。物語性も情緒もなく、サバンナで暮らす人々の生き死にが、淡々と描かれている。例えていうなら中世日本の説話集のような感じです。だからこそ、つくりものとは違う色濃いリアリティーがありました。

『サバンナの記録』(梅棹忠夫著/朝日選書)